忘却曲線とは?
忘却曲線とは、学んだことのうちどれだけが記憶に残っているかを、時間の経過に沿って表したグラフです。学習直後の数分から数時間で急激に下がり、その後は平らになっていきます。そのため、最初の数日を乗り越えた記憶は、ずっとゆっくりとしか薄れていきません。最初にこれを記述したのは、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)です。1885年の著書 Über das Gedächtnis(邦訳『記憶について』、英語版は1913年に Memory: A Contribution to Experimental Psychology として刊行)で、自分自身をただ一人の被験者とした実験をもとに示しました。
この形には、3つの考え方が含まれています。
- 忘却の大半は、早い段階で起こる。 いちばん大きく失われるのは、最初の1時間と最初の1日です。
- 忘れるペースは、だんだん落ちていく。 1週間もちこたえた記憶は、1時間前の記憶よりもはるかに安定しています。
- 復習すると、曲線が変わる。 タイミングのよい復習、とくに答えを記憶から引き出すような復習は、次に訪れる忘却のペースを遅くします。
一方で、忘却曲線は、誰にでも当てはまる割合を教えてくれるわけではありません。エビングハウスの曲線が表しているのは、一人の男性が意味のない音節を暗記した結果であり、その採点には、ほとんどの解説が説明しない指標が使われています。ネットで出回っている数字(「1時間で半分が消える」「1日で70%」)はこの限られた条件から生まれたもので、教科書の1章や講義、関心を持って読んだ記事に、そのまま当てはまるものではありません。
エビングハウスは、自分のデータに対数の式を当てはめました。その後の研究者たちは、たいていの忘却データは、べき関数でも少なくとも同じくらいうまく表せることを見いだしました。実用上は、どちらも同じことを言っています。最初は急に下がり、その後は平らになって、長く尾を引くということです。
エビングハウスの忘却曲線の実験
エビングハウスは、意味という厄介な要素を抜きにして記憶を研究したいと考えました。彼によれば、詩や散文は「規則性なしに変化し、それゆえ妨げとなる、多種多様な影響」を持ち込みます。連想、移り変わる興味、印象的だったり美しかったりするせいで頭に残る一節などです。そこで彼が考え出したのが、無意味つづり(nonsense syllable)でした。子音、母音、子音を並べて、発音はできても意味のない音のまとまりにしたものです(「fep」や「gim」のようなものを思い浮かべてください)。彼はこれを約2,300個作ってよく混ぜ合わせ、そこから無作為にリストを作りました。
有名な曲線のもとになった実験は、1879年から1880年にかけて行われました。
- 覚える。 13個の音節からなるリストを、間違えずに2回暗唱できるまで学習し、その全過程にかかった時間を計りました。
- 待つ。 決められた時間を置きました。20分、1時間、約9時間、1日、2日、6日、31日のいずれかです。
- 覚え直す。 同じリストを同じ基準までもう一度学習し、その時間も計りました。
- 比べる。 再学習で節約できた時間を、最初の学習時間に対する割合で表し、これを記憶がどれだけ残っているかの指標としました。
彼はこうした「学習と再学習」のテストを163回記録しており、1回のテストではたいてい8つのリストを扱いました。そして自分の指標である節約率(savings)を、「再学習において明らかになる労力の節約、すなわち最初の学習で覚えていた量に相当するものを、その最初の学習に要した時間に対する百分率で表したもの」と定義しています。
結果は次のとおりです。
| 学習からの経過時間 | 節約率(エビングハウス、1885年) | 再学習にかかった時間(最初の学習時間に対する割合) |
|---|---|---|
| 20分 | 58.2% | 41.8% |
| 1時間 | 44.2% | 55.8% |
| 約9時間 | 35.8% | 64.2% |
| 1日 | 33.7% | 66.3% |
| 2日 | 27.8% | 72.2% |
| 6日 | 25.4% | 74.6% |
| 31日 | 21.1% | 78.9% |
彼自身の言葉では、こうです。「学習を終えてから1時間後には、忘却はすでにかなり進んでおり、リストを再び暗唱できるようになるまでに、最初の労力の半分を費やさなければならなかった。8時間後には、取り戻すべき労力は最初の努力の3分の2に達した。しかし次第にその過程はゆるやかになり、かなり長い期間についてさえ、それ以上の損失はやっとのことでしか確かめられなかった。」
最後の一文が、この曲線をよく言い表しています。20分後から1日後までのあいだに、節約率は約25ポイント下がりました。1日後から31日後までのあいだに下がったのは、約13ポイントでした。
節約法には、隠れた強みがあります。思い出せないほどかすかな記憶でも検出できるのです。1音節も暗唱できないリストでも、覚え直すのは速いことがあり、それは何かが記憶に残っていたことを示しています。また、節約率が「どれだけ覚えているか」と同じではないのも、このためです。この取り違えが、次に紹介する誤解の大半の背景にあります。
忘却曲線にまつわる5つの誤解
忘却曲線は、心理学で最もよく引用される知見の一つであると同時に、最もゆがめて伝えられている知見の一つでもあります。研修資料や学習アプリ、生産性ブログは、エビングハウス本人が見ても自分の研究だとはわからないような形で、それを繰り返し紹介しています。
| よくある主張 | 研究が実際に示していること |
|---|---|
| 曲線は、まだ思い出せる内容の割合を示している | 示しているのは節約率、つまり再学習がどれだけ速く進んだか。想起は別の指標 |
| 学んだことの約70%は24時間以内に忘れる | この数字は、無意味つづりについてのエビングハウスの1日後の節約率(33.7%)を100%から引いた値にほぼ等しい。想起率ではなく、しかも意味のない材料から得られた数字 |
| 忘却は、きれいな指数関数的減衰をたどる | たいていのデータには、べき関数に近い曲線のほうがよく当てはまる。最初は急で、その後は長くゆっくりと尾を引く |
| 誰もが同じペースで忘れる | 曲線の傾きは、意味、最初にどれだけしっかり覚えたか、睡眠、干渉によって変わる |
| 決まった日(たとえば1日目、7日目、30日目)に復習すれば大丈夫 | 最適な間隔は、覚えておく必要がある期間によって変わる。また、間隔を広げていく方法が等間隔の方法に確実に勝つという結果は出ていない |
誤解1: 曲線は、覚えている割合を示している。 エビングハウスは、時間をおいたあとに音節をいくつ暗唱できるかを数えたことは一度もありません。彼が測ったのは、再学習にかかった時間です。1日後の節約率が33.7%というのは、再学習に最初のおよそ3分の2の時間がかかったという意味です。リストの3分の1を暗唱できたという意味ではありません。想起がほぼゼロでも、節約率はそれよりずっと高いままということがありえます。
誤解2: 何であれ、1日で70%を忘れる。 この説は、社員研修の資料のいたるところで見かけます。これはエビングハウスの1日後の節約率を100%から引いた値にほぼ等しいので、想起ではなく再学習の時間についての話です。しかも、意味を持たないように作られた音節を、一人の人間が覚えた結果にもとづいています。後で取り上げるバイロンの詩を使った彼自身の実験では、詩の連は短い音節リストよりもはるかに速く覚えられ、1日後に覚え直すのも楽でした。
誤解3: 忘却は指数関数的に進む。 多くの解説は、この曲線を R = e^(-t/S) という、すっきりした指数関数的減衰として示しています。しかしこれはエビングハウスの式ではありませんし、データに最もよく当てはまる式でもありません。
1991年、John Wixted と Ebbe Ebbesen は3つの実験(単語の想起、顔の再認、ハトを対象にした記憶課題)を行い、候補となる6つの関数を比較しました。勝ったのは単純なべき関数で、この関数は、エビングハウス自身の節約率データを再分析した結果にもよく当てはまりました。
その5年後、David Rubin と Amy Wenzel は、パラメータが2つの関数105種類を、発表済みの210のデータセットに当てはめました。最もよく当てはまったのは、対数関数、べき関数、時間の平方根を変数とする指数関数、そして時間の平方根を変数とする双曲線関数でした。単純な指数関数的減衰は、その中に入っていませんでした。
べき関数の曲線は、太く長い尾を引きます。記憶がしばらくもちこたえると、その後は指数関数から予測されるよりもはるかにゆっくりとしか衰えません。古い知識は、不安をあおるグラフが示すよりも丈夫なのです。
残る2つの誤解(誰にでも同じ曲線、何にでも同じスケジュール)は、この後のセクションでそれぞれ取り上げます。
忘却曲線は本当なのか?再現実験でわかったこと
本当です。基本的な形は再現されています。これは、心理学では本来もっとあってよいはずなのに、意外と珍しいことです。2015年、アムステルダム大学の Jaap Murre と Joeri Dros は、PLOS ONE 誌に綿密な再現実験を発表しました。
エビングハウスのときと同じく、被験者は第2著者の Dros ただ一人でした。Dros はオランダ語を母語としていたため、著者らはこれを、ドイツ語話者以外による初めての再現実験と位置づけました。2011年12月から2012年2月にかけて、Dros は約70時間をかけて、104個の無意味つづりからなるリスト(13個ずつ8行で、エビングハウスが8つのリストを使う1回のセッションで覚えたのと同じ数)を覚え、エビングハウスと同じ7つの間隔をおいて覚え直しました。
著者らは、「エビングハウスの忘却曲線は確かに再現されており、その曲線は完全になめらかではなく、24時間のデータ点から、おそらく上向きの跳ね上がりを示している」と結論づけました。2人の比較には、それ以前にドイツで行われた Heller、Mack、Seitz(1991年)の再現実験から、Mack と Seitz という2人の被験者のデータも含まれていました。
| 学習からの経過時間 | エビングハウス(1885年) | Mack(1991年) | Seitz(1991年) | Dros(2015年) |
|---|---|---|---|---|
| 20分 | 58.2% | 54.4% | 44.2% | 47.2% |
| 1時間 | 44.2% | 43.2% | 32.5% | 37.3% |
| 9時間 | 35.8% | 28.5% | 27.0% | 27.6% |
| 1日 | 33.7% | 31.6% | 27.0% | 31.7% |
| 2日 | 27.8% | 36.5% | 28.6% | 23.0% |
| 6日 | 25.4% | 30.9% | 20.5% | 16.8% |
| 31日 | 21.1% | 25.8% | 20.1% | 4.1% |
1世紀以上の時を隔てた4人が、同じ基本的な形を描き出しました。目を引く点が2つあります。
1日後の跳ね上がり。 Dros のデータでは、1日後の節約率(31.7%)が、9時間後(27.6%)より高くなっていました。Mack のデータにも同じ上昇が見られます。エビングハウスも、より穏やかな形でこれを目にしていました。彼の節約率は9時間後から24時間後のあいだでほとんど変わらず(35.8%から33.7%)、その後の1日でより速く下がったのです。
エビングハウスは、「夜と睡眠」でこのパターンを説明できるかどうかを検討しましたが、説明はつかないと判断し、24時間後の数値はおそらく「いくぶん大きすぎる」と結論づけました。それでも彼は、「その点については確信が持てない」と付け加えています。1883年と1884年に行った別の研究のテストでも、ほぼ同じ数値(33.4%)が出ていたからです。
Murre と Dros は、この跳ね上がりを違った見方でとらえました。「睡眠が記憶に及ぼす影響についての現在の研究からは、こうした跳ね上がりが予測されるだろう」と2人は書いています。ただし、この種の実験については、それが「まだ確かめられていない」とも述べています。9時間の間隔なら、起きているあいだの1日のうちに収まることがありますが、1日の間隔には必ず一晩の睡眠が含まれます。2人による曲線の当てはめでは、跳ね上がりは Mack で最も大きく、エビングハウスでは小さく、Dros では見られませんでした。Dros の当てはめについて2人は、1か月後のスコアが非常に低かったせいで、おそらくゆがんでいると考えていました。
31日後の外れ値。 Dros の1か月後の節約率はわずか4.1%で、ほかの誰よりもはるかに低い値でした。著者らはその原因の一部を、実験期間を通じて Dros の学習時間がじわじわと延びていったことに求めています。この延びは、順向干渉(先に覚えたリストが新しいリストの邪魔をすること)か、疲労によるものかもしれないと2人は述べています。この延びを補正すると数値は13.7%に上がりましたが、1か月後の節約率が20.1%から25.8%だったほかの3人と比べると、まだかなり低い値でした。
この形は、無意味つづりにとどまらず、広く成り立ちます。1世紀分の記憶保持研究を対象にした Rubin と Wenzel の調査では、210のデータセットの大半に、同じ少数の曲線のいずれかがよく当てはまりました。主な例外は自伝的記憶でした。
忘却曲線の形を変えるもの
エビングハウスは、データから意味を締め出すために無意味つづりを選びましたが、そのせいで無意味つづりは、最悪のケースに近いものにもなりました。記憶を引っかける手がかりが何もないからです。実際の学習がこのような形になることはめったになく、いくつかの要因が曲線の形を変えます。
意味。 エビングハウスは1884年、バイロン(Byron)の長編詩 Don Juan(『ドン・ジュアン』)の連(スタンザ)を使って、補足的な実験を行いました。80音節からなる各連を覚えるのにかかったのは、「わずか9回ほどの反復」でした。音節のデータから推計すると、80〜90個の無意味つづりなら70〜80回の反復が必要だったはずだと彼は見積もっています。彼はこれを、「意味、リズム、韻、そして共通の言語という結びつきが合わさって、記憶すべき材料にもたらす並外れた利点」と呼びました。詩の連は、記憶にもよく残りました。1日後、連の再学習にかかったのは最初の労力の約半分で、12音節のリストでは約3分の2でした。しかも詩の連は、そもそも覚えるのに必要な反復回数が、12音節のリストの半分にも満たなかったのです。(なお、それよりずっと長い24音節と36音節のリストは、覚えるのにはるかに多くの反復を要しましたが、記憶への残り方は詩の連と同等か、それ以上でした。)
最初にどれだけしっかり覚えたか。 Harry Bahrick による1984年の研究では、733人を対象に、最長で50年前に学校で学んだスペイン語の知識をテストしました。参加者の知識は最初の3〜6年で低下し、その後は最長30年にわたってほとんど変わらず、最後にまた低下しました。
「最初に習得した情報のかなりの部分は、使われることも復習されることもないにもかかわらず、50年以上にわたって引き出せる状態のまま保たれる」と Bahrick は書いています。彼は、この長持ちする記憶の層を「パーマストア」(permastore)と呼びました。その大きさは、最初の学習の水準(スペイン語の授業をどれだけ取り、どんな成績を収めたか)に応じて変わっていました。しかも大半の人は、それ以来ほとんど練習していませんでした。
睡眠。 John Jenkins と Karl Dallenbach による1924年の研究には、2人の学生が参加しました。2人は無意味つづりを覚え、眠って、あるいは起きて過ごした1時間、2時間、4時間、8時間のいずれかのあとにテストを受けました。眠ったあとのほうが、多くを覚えていました。Jenkins と Dallenbach は、忘却とは「古い印象や連合が衰えるというよりも、むしろ新しいものによって古いものが干渉され、抑制され、あるいは消し去られるという問題である」と結論づけています。現代の研究は、睡眠を、記憶を定着させるための能動的な時間ととらえています。これは、再現実験で見られた1日後の跳ね上がりとも符合します。
干渉。 新しく学んだことは前に学んだことと競合し、前に学んだことは新しく学ぶことの邪魔をします。これは、Dros の学習時間が実験のあいだにじわじわ延びていった理由の一つとして考えられますが、Murre と Dros は原因を特定できませんでした。
復習の仕方。 読み返すことと思い出すことは、似たものに感じられますが、まったく異なる曲線を生みます。それが次のセクションのテーマです。
忘却曲線に打ち勝つ方法
忘却を止めることはできませんし、止めたいとも思わないはずです。それでも、復習のたびに曲線を確実にゆるやかにしてくれる方法が2つあります。復習の間隔を空けること(間隔反復)と、毎回の復習をテストにすること(想起練習)です。
間隔。 エビングハウスは、分散効果(spacing effect)も見つけていました。自分の2つの実験を比べた結果、3日間に分けて行った38回の反復で、1日に詰め込んだ68回の反復と同じくらいしっかり12音節のリストを覚えられることがわかったのです。彼はこれについて、「相当な回数の反復を行う場合には、それらを一度にまとめて行うよりも、ある期間にわたって適切に分散させるほうが明らかに有利であるという仮定を、確からしいものにする」と書いています。
では、復習の間隔はどのくらい空ければよいのでしょうか。最も役に立つ答えは、Nicholas Cepeda、Edward Vul、Doug Rohrer、John Wixted、Hal Pashler の研究(2008年)から得られます。研究チームは1,354人にあまり知られていない事実を教え、最長3か月半の間隔をおいて1回だけ復習させ、その復習から最長350日後にテストしました。最適な間隔は、テストがどれだけ先にあるかによって変わりました。
| 復習からテストまでの期間 | 最初の学習から復習までの最適な間隔 | その期間に占める間隔の割合 |
|---|---|---|
| 1週間 | 約3日 | 43% |
| 5週間 | 約8日 | 23% |
| 10週間 | 約12日 | 17% |
| 350日 | 約27日 | 8% |
間隔を正しく設定することには、大きな意味がありました。すぐに復習した場合と比べて、試した中で最適だった間隔は、最終テストでの想起を、1週間後のテストで10%、それより長い期間のテストではそれぞれ59%、111%、77%向上させました。
この研究からは、実践的なルールが2つ導かれます。その内容が必要になるのが先であるほど、間隔は長くするべきです。ただし、全体の期間に占める割合としては小さくなっていきます。また、少し長すぎる間隔は、短すぎる間隔ほど損になりません。間隔が最適な値に近づくにつれて成績は急速に上がり、最適な値を超えてからは、ゆるやかにしか下がらなかったのです。
想起。 Henry Roediger と Jeffrey Karpicke(2006年)は、大学生に短い散文を2つ読ませました。一つは太陽について、もう一つはラッコについての文章です。どの学生も、一方の文章は読み返し、もう一方の文章ではフィードバックのない想起テストを受けました。
5分後の時点では、読み返したほうが良い結果に見えました。想起率は81%対75%です。2日後にはこれが逆転し(テストした文章が68%、読み返した文章が54%)、1週間後にはテストした文章が56%、読み返した文章が42%でした。つまり、テストした文章は1週間たっても、読み返した文章の2日後と同じくらいよく覚えられていたのです。
2つ目の実験では、差がさらにはっきり表れました。文章を5分間だけ学習し、そのあと続けて3回の想起テストを受けた学生は、1週間後に内容の61%を覚えていました。5分間を4回続けて、すべて読み返しに使った学生は40%でした。読み返した学生は、平均で14.2回も読んでいたにもかかわらずです(テストを受けた学生は3.4回)。
読み返しをした学生のうち、1週間後にテストされた人の想起量は、5分後にテストされた人より52%少なくなっていました。繰り返しテストを受けた学生では、この低下は14%でした。しかも、自分がいちばんよく覚えていられると予測していたのは、読み返しをした学生たちのほうでした。
この2つは、Dunlosky らが10の学習法を検討した2013年のレビューで「有用性が高い」(high utility)と評価した学習法、つまり練習テストと分散学習にあたります。ハイライトと読み返しの評価は低いものでした。テストの側面については、アクティブリコールのガイドで詳しく解説しています。
間隔反復のスケジュール: 固定型、拡大型、適応型のどれがよいか?
間隔を空けることに効果があるなら、どんな空け方が最もよいのでしょうか。スケジュールは、大きく3つのタイプに分けられます。
固定型のスケジュールでは、すべての項目を同じ日程で復習します。たとえば2357勉強法では、1日目にトピックを学び、2日目、3日目、5日目、7日目に復習します。計画を立てやすいので、試験前によく使われています。
拡大型のスケジュールでは、正解するたびに間隔を広げていきます。紙で行う古典的なやり方が、ライトナーシステムです。カードは、復習の頻度がだんだん低くなる箱へと上がっていき、間違えると振り出しに戻ります。
では、間隔を広げていくほうが、等間隔より優れているのでしょうか。確実にそうだとは言えません。Alice Latimier、Hugo Peyre、Franck Ramus による29件の研究を対象にした2021年のメタ分析では、想起練習は、まとめて行うより間隔を空けて行ったほうが大きな効果があった(g = 0.74)一方で、間隔を広げていく場合と一定の間隔の場合とのあいだには、実質的に差がありませんでした(g = 0.034)。
適応型のスケジューラーは、利用者自身の忘却曲線をモデル化し、それぞれの項目を、忘れそうになる直前に再び出題します。Anki は、バージョン23.10から FSRS アルゴリズムに対応しています。FSRS は、利用者の復習履歴にべき乗則に従う忘却曲線を当てはめ、各カードに「安定度」(stability)を割り当てます。これは、そのカードを思い出せる予測確率が90%に下がるまでの日数です。復習は、その確率が「目標保持率」(desired retention)に達したときに予定され、目標保持率はデフォルトで90%です。
Duolingo は、独自のモデルを作りました。Burr Settles と Brendan Meeder による2016年の半減期回帰(half-life regression)は、学習者の記憶における各単語の「半減期」を推定するもので、Duolingo がそれまで使っていたライトナー式のアルゴリズムより、少なくとも45%小さい誤差で想起を予測しました。
| スケジュールの種類 | 間隔の決め方 | 向いている用途 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 固定型(2357勉強法、「1、7、30日」のようなルール) | すべての項目で同じ日付 | 日程が決まっている1回の試験 | どの項目をすでに知っているかを考慮しない |
| 拡大型(ライトナーボックス) | 正解するたびに間隔が伸び、間違えるとリセットされる | 手作りのフラッシュカード、数百項目程度 | 同じ箱のカードはすべて同じ間隔になる |
| 適応型(FSRS を使う Anki、Duolingo) | 想起の確率が目標値まで下がる時期をモデルが予測 | 大きなデッキ、長期にわたる学習 | 定期的な復習と、正直な自己採点が必要 |
つまり、どのスケジュールを選ぶかは、そもそも復習をするかどうかほど重要ではありません。復習の間隔を空け、答えを記憶から引き出させるプランなら、どれでも、思いついたときに読み返すだけのやり方に勝るはずです。
読んだものや見たものに忘却曲線を活かす
私たちが読むものの大半は、曲線の急な下り坂をそのまま下っていきます。二度と読み返さないからです。ハイライトをすると前に進んだように感じますが、ハイライトは将来の復習への目印であって、復習そのものではありません。Dunlosky のレビューでも、ハイライトの有用性は低いと評価されていました。ハイライトが本当に役立つのは、実際に効果のある2つの学習法につなげたときです。
ここまでの研究をもとにした習慣を紹介します。
- ハイライトは控えめにし、自分の言葉で一言添えます。 Glasp のウェブハイライターで、あとで自分をテストしたいと思う数文だけに印をつけ、それぞれがなぜ重要なのかをメモしましょう。自分の言葉に置き換えると、意味を処理せざるをえなくなります。無意味つづりとは正反対です。
- タブを閉じる前に自分をテストします。 Roediger と Karpicke の研究では、最初の想起テストは読んでから数分以内に行われていました。ページを閉じて、覚えていることを書き出しましょう。ブラーティング法を使えば、これを体系立てて行えます。そのあと、書き漏らしたことをハイライトと照らし合わせて確認します。
- ハイライトが自分のもとに戻ってくるようにします。 Glasp の Daily Highlight Review メールは、過去のウェブハイライトの中から無作為に選んだいくつかを、毎日、週2回、または週1回届けてくれます。頻度はメール設定で選べます。届いたハイライトは、一つひとつを問いとして扱いましょう。読み返す前に、その文脈と、なぜ保存したのかを思い出してみてください。
- 動画にも同じことをします。 講義も記憶から薄れていきます。YouTube Summaryを使えばタイムスタンプ付きの文字起こしと要約が手に入るので、残しておく価値のある箇所をハイライトし、読んだものと一緒に復習できます。
- 本もこの流れに取り込みます。 Kindle のハイライトをインポートし、Daily Kindle Review メールの頻度を設定すれば、本の一節も再び目の前に現れるようになります。
- すべてを横断して、自分にクイズを出します。 まず、ある問いに対する自分の答えを書き出し、それからGlasp の Chat with Highlights(自分のハイライトと対話できる AI チャット)に、その問いについて自分のハイライトに何が書かれているかを尋ねます。回答はそのもとになった一節を示してくれるので、自分の答えを、保存した内容と照らし合わせて確認できます。
- 絶対に忘れたくない事実は、スケジューラーに任せます。 何か月も必要になる単語、公式、定義については、ハイライトをフラッシュカードにして、タイミングの管理はライトナーボックスや Anki に任せましょう。
よくある質問
忘却曲線とは、簡単に言うと何ですか?
忘却曲線は、学んだ情報を私たちがどれくらいの速さで失っていくかを示すものです。記憶は最初の数時間から数日で急速に落ち込み、その後は低下のペースがゆるやかになります。1885年にヘルマン・エビングハウスが初めて記述しました。学んだ内容を復習すると、とりわけ記憶から思い出す形で復習すると、曲線はゆるやかになります。
学んだことは、どのくらいの速さで忘れてしまうのですか?
一つの数字で表すことはできません。無意味つづりを使ったエビングハウスの実験では、1日後にリストを覚え直すのに最初の約3分の2の時間がかかり、1か月後には5分の4近くかかりました。意味のある材料の場合は、ふつう節約率ではなく想起で測ります。Roediger と Karpicke による2006年の研究では、散文を読み返した学生は1週間後にその内容の40%を思い出しましたが、想起を練習した学生は61%を覚えていました。
忘却曲線は本当ですか?
はい。最初は急で、その後はゆるやかになるという基本的な形は、1世紀以上にわたって成り立ってきました。最も直接的な裏づけは、Murre と Dros が2015年にエビングハウスの実験を繰り返した研究です。成り立たないのは、この曲線によく添えられている細かな割合のほうです。それらは、一人の人間が意味のない音節を覚えた結果から来ています。
学んだことの70%を24時間で忘れるというのは本当ですか?
いいえ。この数字は、エビングハウスの1日後の節約率33.7%を100%から引いた値にほぼ等しいものです。そして節約率が測っていたのは、無意味つづりのリストをどれだけ速く覚え直せたかであって、どれだけ思い出せたかではありません。学ぶことすべてに当てはまる数字でもなく、どれだけ記憶に残るかは、意味、睡眠、そして復習の仕方に大きく左右されます。
忘却曲線に打ち勝つにはどうすればいいですか?
想起と間隔を組み合わせましょう。読み返す代わりに自分をテストし(本を閉じて思い出す、フラッシュカードに答える、声に出して説明する)、そのテストの間隔を空けます。長く覚えておく必要がある内容ほど、間隔を長くします。睡眠も助けになります。まずは、学んだ直後に短い自己テストをし、その内容が必要になるまでに間隔を空けて何度か復習する、という流れを基本にするのが賢明です。
間隔反復で最適な復習スケジュールは何ですか?
その内容がいつ必要になるかによって変わります。Cepeda ら(2008年)の研究では、復習までの最適な間隔は、1週間後のテストなら約3日、1年近く先のテストなら約27日でした。間隔を広げていく方法が等間隔の方法に確実に勝つという結果は出ていないので、実際に続けられるスケジュールを選びましょう。試験前なら固定のプラン、フラッシュカードならライトナーボックス、大きなデッキなら Anki のような適応型のアプリです。
忘却曲線を表す数式はありますか?
エビングハウスは、自分のデータに b = 100k / ((log t)^c + k) という式を当てはめました。b は再学習で節約された時間の割合、t は分単位の時間(学習が終わる1分前から数えたもの)、log は10を底とする対数(常用対数)で、k = 1.84、c = 1.25 です。多くのウェブサイトが紹介している指数関数 R = e^(-t/S) は、彼の式ではありません。Wixted と Ebbesen(1991年)は、単純なべき関数が、指数関数や対数関数を含むほかの5つの関数より優れていることを見いだし、Rubin と Wenzel(1996年)は、最もよく当てはまる4つの関数の中に、対数関数とべき関数が含まれることを示しました。Anki の FSRS スケジューラーは、べき関数の曲線を使っています。
忘却曲線を発見したのは誰ですか?
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(1850〜1909年)が、1885年の著書 Über das Gedächtnis(『記憶について』)で記述しました。この本は、1913年に Memory: A Contribution to Experimental Psychology として英訳されています。彼は自分自身をただ一人の被験者として、数年にわたって無意味つづりのリストを暗記しては覚え直しました。
忘れる前に、最初の復習を予定に入れよう
忘却曲線が表しているのは、一度学んだきり二度と見返さないものに起こることです。自分の曲線が急だと感じたら、記憶力のせいにする前に、その内容をどう学び、どう復習したかを振り返ってみてください。エビングハウスは最初の落ち込みがどれほど急かを示し、その後の研究は、その落ち込みのどれだけを避けられるかを示してきました。カギは、毎回の復習をテストにすること、そして覚えておく必要がある期間に合わせて復習の間隔を空けることです。
まずは、今日読んだものから始めましょう。残しておく価値のある考えをいくつかGlaspでハイライトし、タブを閉じる前に自分をテストして、復習メールでハイライトが戻ってくるようにしてください。いちばん急な落ち込みは最初に訪れます。だからこそ、最初の復習を今すぐカレンダーに入れておきましょう。Glasp の無料の間隔反復の計算ツールを使えば、開始日と、試験がある場合はその日付から、カレンダーファイルとしてダウンロードできる復習日を作れます。