物語はなぜ人を動かすのか?朝井リョウの考察

TL;DR
物語は、情報を選び、意味のある因果として結び直すことで、人の感情や行動基準を変える。推し活や視聴者投票型番組はその作用を可視化する一方、複雑さを保てる小説は、熱狂を操る側と参加する側の双方を相対化できる。
Transcript
自分が話したいことを話してるからつまらないのよって言われて本当に言いたいことをんでこそやっぱ何々って言って 知りたくなっちゃう。誰にも知られたくないように見えるように書きたくなる。本ってもう包丁とか車とか似てるのかもしれないですけど使われ方次第で はい。 こうどうにでもなるもの因価関係が複雑なものを複雑なまの物体に閉じ込めることっていうのはすごい難しくなってると思うんで、それができる結構珍しい媒体。 あ井さんって人間は好きですか? うわ、やな。うーん。大好きではない自人があります。 あ、大好きではない。 はい。 クロスディグをご覧の皆さん、こんにちは 。フューチャーカード始まります。本日の テーマは人類と物語です。皆さんの身近に ある物語、 もちろん小説、映画、コンテンツもそうだ と思うんで... Read More
Key Insights
- 物語は、情報を選び取って意味のある順序に結び直し、受け手の感情だけでなく、それまでの行動基準まで変える力を持つ。
- ファンダム経済は、本気で応援対象を勝たせたい人々の集団を通じて、人間が物語に動かされる仕組みを観察できる入口である。
- 視聴者投票型番組は、受け手を結果に関与する参加者へ変え、昨日まで取らなかった行動を始めさせる契機になり得る。
- 推し活の熱狂は、行動を上書きする危うさを含む一方、強い原動力を得た人間の命の輝きとして、周囲にはまぶしく映ることがある。
- 語る行為は、聞き手を引き付けるために情報を取捨選択し、効果的につなぎ直すため、他者を惑わせる起点にもなり得る。
- 小説の二層構造は、ファンダム経済のような広い入口で読者を招き、その奥に人間を動かす原動力という本題を置く方法である。
- 作者の経歴や宣伝意図は、作品の読みを一直線に限定する場合があり、朝井リョウは情報の少ない状態で小説と向き合うことを好む。
- 小説は、複雑な因果関係を単純な結論へ縮めず、複雑なまま一つの物体に閉じ込めて受け手に渡せる、珍しい媒体である。
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Questions & Answers
Q: 物語はなぜ人の行動を変えるのですか?
物語は、ばらばらの情報を選び、意味や目標のある流れとして提示することで、人の行動基準を変えるからです。朝井リョウは、視聴者投票型オーディションを例に、応援対象を勝たせたい人々が、それまでしなかった投票や周囲への働きかけを始める変化を語っています。
Q: ファンダム経済から集団行動の何が分かりますか?
ファンダム経済からは、人が共通の対象や目標を得たとき、集団として行動を強める原理が見えてきます。朝井リョウは、本気で推しを勝たせたい気持ちの集合を考えることが、推し活に限らず、選挙や戦争など別の集団が動く仕組みを考える入口にもなると述べています。
Q: 推し活の熱狂にはどんな危うさがありますか?
推し活の熱狂には、応援対象を勝たせる物語によって、自分の判断基準や行動が大きく上書きされる危うさがあります。また、魅力を他者に伝える際には情報が選別され、最も引き付けやすい形へ再構成されます。ただし朝井リョウは、その強い原動力を命の輝きとしてまぶしく感じる面も語っています。
Q: ファンであることと推し活の違いは何ですか?
朝井リョウの整理では、ファンは作品や演者から受け取るだけでも成立しますが、推し活は受け手が主体となって能動的に活動する意味合いが強いものです。投票、発信、他者への紹介などがその例で、好きでいることに加えて、対象の結果や評価を変えようと行動する点に違いがあります。
Q: 小説の二層構造とはどのような方法ですか?
小説の二層構造とは、まず関心を持たれやすい題材を広い入口として置き、その奥に本当に扱いたい主題を配置する方法です。朝井リョウは『イン・ザ・メガチャーチ』でファンダム経済を入口にしながら、人間を動かす原動力や、物語が集団へ及ぼす作用を描こうとしたと説明しています。
Q: なぜ本当に言いたいことを直接書かないのですか?
本当に扱いたい主題を直接掲げても、広い読者には届きにくい場合があるからです。朝井リョウは、言いたいことを別の題材で包むことで、かえって遠くまで届けられると考えています。また、堂々と表明された主張より、誰にも知られたくない感情のほうに読み手の関心が向くとも語っています。
Q: 作者の情報を知らずに小説を読む利点は何ですか?
作者の性別、年齢、経歴、宣伝意図などから離れ、文章と作品そのものに向き合えることが利点です。朝井リョウは、作者の狙いや売り方が見えると読みが冷める場合があり、作品外の情報が解釈を一直線にすることを警戒しています。そのため、読み手としては作者情報の少ない状態を好んでいます。
Q: 朝井リョウが表に出て発信するのはなぜですか?
主な理由は、本の宣伝手段が限られる中でインタビューを断る勇気を持てなかったことと、個人作業だけでなく人との摩擦に触れたい性質があることです。一方で、発言が作品の読み方を固定する矛盾も自覚しており、姿を見せても人物像が簡単には定まらない状態を理想としています。
Q: 物語を語る行為はなぜ危ういのですか?
語り手は聞き手を引き付けるために、事実の一部を選び、最も面白く伝わる順序へつなぎ直すからです。その編集によって、複雑な出来事が特定の因果や印象に整理され、聞き手を惑わせる可能性があります。朝井リョウは、自分が出来事を語る際にも、その起点になりたがる危うさを感じると述べています。
Q: 複雑な社会を考えるうえで小説にはどんな価値がありますか?
小説には、単純な善悪や一つの因果へ回収せず、複数の立場と複雑な関係を同じ作品内に保てる価値があります。朝井リョウは、因果関係が複雑なものを複雑なまま一つの物体に閉じ込めることが難しくなっている状況で、それを実現できる小説は珍しい媒体だと捉えています。
Summary & Key Takeaways
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物語が人を動かす仕組みは、出来事を選択し、受け手が参加できる意味や目標として組み立てることにある。朝井リョウは、視聴者投票型オーディションで、周囲の人々が応援対象を勝たせるために、それまで取らなかった行動を始める変化を観察した。ファンダムは推し活だけでなく、選挙や戦争を含む集団行動の原理を考える入口にもなるという。
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物語には、人を結び付けて行動させる力と、情報を選別して聞き手を特定の方向へ導く危うさが同居する。誰かに出来事を語る際、面白く伝えるために情報を取捨選択し、効果的な順序につなぎ直すだけでも物語は生まれる。語り手が人を惑わせる起点になり得るため、熱狂する側だけでなく、仕掛けて操縦する側の視点も必要になる。
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小説は、ファンダム経済のような関心を集めやすい題材を入口にしながら、その奥に人間を動かす原動力という主題を置ける。朝井リョウは、表明しやすい主張より、誰にも知られたくない感情を書くことに価値を見いだす。また、作者の意図や属性から距離を置き、因果関係が複雑なものを単純化せず、一つの作品に閉じ込められる点を小説の力として捉えている。
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