記憶術(ニーモニック)とは
記憶術(ニーモニック)とは、言葉、文、曲、場所、鮮明なイメージなど、もともと覚えやすいものに情報を結びつけて、記憶しやすくする方法の総称です。英語の mnemonic は ni-MON-ik と発音し、「記憶の」を意味するギリシャ語の mnēmonikos に由来します。ギリシャ神話の記憶の女神ムネモシュネ(Mnemosyne) と同じ系統の言葉です。
皆さんも、すでにいくつか使っているはずです。虹の色を ROY G BIV で覚えたり、ト音記号の五線上の音を「Every Good Boy Does Fine」(各語の頭文字が E、G、B、D、F)で覚えたりしたことがあれば、最も一般的な「頭文字を使う記憶術」を使ったことになります。
記憶術の働きは、大きく二つあります。
- ばらばらの情報に形を与えます。惑星の名前そのものには並び順を示すものがなく、「Huron」という名前だけでは、一緒に覚えるべきほかの四つの湖はわかりません。文や韻、家の中を巡る道順を使えば、必然的なつながりのないリストにも、記憶にとどめやすい構造を与えられます。
- 思い出すための出発点を作ります。忘れたと感じる情報の多くは、保存されていても見つけにくくなっています。Endel Tulving と Zena Pearlstone は、古典的な1966年の実験で、カテゴリーの手がかりを与えると単語リストをより多く思い出せることを示しました。頭文字、韻、想像上の場所は、意図的に作り出す手がかりです。
二つ目の働きを考えると、記憶術がとても役立つ場面と、役に立たない場面がある理由がわかります。記憶術は何かを思い出す手助けをしますが、理解を助けるものではありません。「Please Excuse My Dear Aunt Sally」は演算の順序を思い出す手がかりになりますが、なぜそのルールがあるかは教えてくれません。しかも後で見るように、ルール自体も正確に表していません。
そこで、この記事では次の原則を土台にします。必然的なつながりのない情報には記憶術を使い、そうでない情報は理解を深めましょう。原理から導ける事実なら、その原理を学びます。誰かが決めた名前、数字、順序なら、記憶術が覚えるための最短の道になることがよくあります。
記憶術の9つの種類と具体例
記憶術の多くは、二つの系統に分けられます。言語を使う記憶術は、文字、単語、音を利用します。頭字語、頭文字の文(アクロスティック)、韻、歌などです。視覚を使う記憶術は、頭の中のイメージを利用します。場所法、ペグ法、キーワード法、ストーリー法などです。チャンキングは情報に何かを付け加えるのではなく、情報を組み直すため、両者の中間に位置します。
| 種類 | 仕組み | 代表例 | 向いているもの | 研究の裏づけ |
|---|---|---|---|---|
| 頭字語 | 各項目の頭文字を並べて一つの語にします | HOMES:五大湖の Huron、Ontario、Michigan、Erie、Superior | すでに知っている短いリスト | 控えめで、主に順序を覚える助けになります |
| 頭文字の文(アクロスティック) | 各項目の頭文字で始まる単語をつなげて文にします | E、G、B、D、F を覚える「Every Good Boy Does Fine」 | 順序のあるリスト | 控えめで、主に順序を覚える助けになります |
| 韻 | 事実を韻とリズムに乗せます | 「Thirty days hath September, April, June, and November」(30日の月を覚える英語の例) | 短いルールや事実 | 直接検証した研究は少数です |
| 歌・短い覚え歌 | 単純なメロディーに言葉を乗せます | アルファベットの歌 | 正確な言い回し | 同じメロディーを繰り返す場合に限り役立ちます |
| チャンキング | 項目をまとめ、意味のある少数のかたまりにします | 電話番号を 555-867-5309 と区切ります | 数字や長い文字列 | 強い裏づけがあります |
| 場所法(記憶の宮殿) | よく知っている道順に沿ってイメージを置きます | 自宅の各所に買い物リストの品物を配置します | 順序のある長いリストやスピーチ | 強い裏づけがあります |
| ペグ法 | あらかじめ覚えた、数字と韻を踏む言葉に項目を結びつけます | 「One is a bun, two is a shoe, three is a tree」(数字の音に、丸パン・靴・木を対応させる英語の例) | 番号つきのリスト | 実験室の研究で強い裏づけがあります |
| キーワード法 | 音の似た単語とイメージで、語と意味を結びつけます | スペイン語の pato(カモ)は英語の「pot」(鍋)と音が似ているので、鍋をかぶったカモを想像します | 単語や専門用語 | 想起には強い裏づけがありますが、時間を置いた場合の結果はまちまちです |
| ストーリー法(連鎖法) | 鮮明な物語の中で項目をつなぎます | 一続きの場面の中で、リストの各項目を次の項目につなげます | 短いリスト | 実験室の研究で強い裏づけがあります |
それぞれをもう少し詳しく見てみましょう。
頭字語と頭文字の文(アクロスティック)。頭字語は文字そのものを使います。ROY G BIV なら red、orange、yellow、green、blue、indigo、violet(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)の頭文字です。頭文字の文は、一つひとつの文字を単語に変える方法で、頭文字を並べても発音できる語にならない場合に役立ちます。「King Philip Came Over For Good Soup」は、kingdom、phylum、class、order、family、genus、species(界・門・綱・目・科・属・種)を覚える例です。
韻と歌。「In fourteen hundred ninety-two, Columbus sailed the ocean blue.」は、コロンブスが1492年に航海したことを覚える英語の例です。韻、韻律、メロディーによって次に来る言葉が絞られるので、間違った言葉を入れると違和感が生まれます。非常に古い例もあり、大英図書館が所蔵する1400年代前半の祈祷書にも、すでに「Thirti dayes hath November, April, June, and September.」とあります。
チャンキング。ばらばらの十桁の数字は覚えておきにくくても、三つのかたまりなら覚えやすくなります。チャンキングの解説記事で詳しく紹介しています。
場所法。よく知っている道順を思い浮かべ、途中の目印ごとに各項目の鮮明なイメージを置きます。思い出すときは、その道順をもう一度たどります。ほとんどの記憶力選手権で使われている方法で、記憶の宮殿の詳しい解説もあります。
ペグ法。まず「one is a bun, two is a shoe, three is a tree」のように、決まった一組のペグ(掛けくぎに当たる手がかり)を覚えます。新たに覚える項目を、イメージでそれぞれのペグに掛けていきます。三番目の項目が「ハンマー」なら、木にハンマーが刺さっているところを想像します。数字ごとに独立した手がかりがあるので、七番目の項目へ直接飛ぶこともできます。
キーワード法。新しい語とその意味を、二つのつながりで結びます。一つは、音が似ているなじみのある単語とのつながり(pato と「pot」)で、もう一つは、その単語と意味を結ぶイメージ(鍋をかぶったカモ)です。スタンフォード大学の Richard Atkinson と同僚が、1970年代に外国語の語彙学習のために開発しました。同じ二段階の方法は、専門用語や名前にもよく使われます。
ストーリー法。項目を一つの物語につなげ、それぞれが次の項目に何かをするようにします。子どもっぽく聞こえるかもしれませんが、Bower と Clark の1969年の研究では、学生が十個の名詞からなるリスト12組を学習しました。最終テストで、各リストを物語にした学生が思い出せた単語の割合は、リストごとの中央値を平均すると93%で、通常の方法で学習した学生は13%でした。
記憶術は本当に役立つのか:研究が示す効果
結論から言うと、覚える内容が合っていれば役立ちます。ただし、方法によって効果には大きな差があります。
キーワード法。Atkinson と Raugh の1975年の実験では、スタンフォード大学の学部生52人が、3日間でロシア語の名詞120語を学びました。4日目の最終テストでは、キーワードを与えられた学生は72%の単語の意味を思い出し、好きな方法で学んだ学生は46%でした。約6週間後の抜き打ちテストでも、キーワード群が43%対28%で上回りました。Atkinson は、指示に従って丸暗記する群と比較したスペイン語の実験も報告しており、結果は88%対28%でした。
記憶の宮殿とペグ法。Henry Roediger が四つの記憶術を比較した1980年の研究では、学部生150人が20語のリストを覚えました。学習直後に、単語を元の正しい位置で思い出せた数を採点すると、単語の意味を考えながら反復した対照群は平均5.8語、ストーリー法(連鎖法)は9.6語、ペグ法は12.5語、場所法は13.6語でした。1日後にも、ストーリー法、ペグ法、場所法の各群は、反復群のおよそ四倍の単語を正しい位置で思い出していました(4.9〜5.8語に対し、反復群は1.3語)。単語ごとにイメージを思い浮かべても、イメージ同士を結びつけなければ、正しい位置を覚える効果は反復と変わりませんでした。
訓練の効果も持続します。Martin Dresler の2017年の研究では、記憶訓練の経験がない男性51人を三つの群に分けました。場所法の群の17人は、1日30分、6週間にわたって計40回練習しました。同じデータを後に分析したところ、この群が72語のリストから思い出した語数は約25語から62語へ増え、ワーキングメモリの訓練をした群や、訓練をしなかった群を大きく上回りました。4か月後の追跡調査では、単語リストを再び学習した後、場所法の群は約50語を思い出し、ほかの二群は約30語と27語でした。
優れた記憶力は、生まれつきというより訓練で身につけられるようです。Eleanor Maguire と同僚が、世界記憶力選手権などの大会で優れた記憶力を発揮する十人を調べたところ、そのうち九人が場所法を使っていました。集団としての一般的な能力検査の成績は対照群と同程度で、脳画像にも有意な構造上の違いは見られませんでした。
実際の教室での効果。教育心理学者の Joel Levin が1993年に、教室で行われた20年間の研究を評価したところ、二つの領域が A 評価を得ました。「事実に関する内容のために特別に設計された記憶術教材」と「教育上の困難を抱える生徒への記憶術の適用」です。一方、生徒が方法を使い続けるか、自力で応用できるかを調べた研究の評価は、はるかに低いものでした。二つ目の A 評価は、その後の研究でも裏づけられています。Thomas Scruggs と Margo Mastropieri が2000年に行った研究の統合では、学習面や行動面に問題を抱える生徒への記憶術の指導は、平均効果量1.62という、教育研究の基準では非常に大きな効果を示しました。
学生全般では、推定される効果はこれより小さいものの、十分に確かです。Gregory Donoghue と John Hattie による2021年のメタ分析では、よく知られた2013年のレビューの対象研究から得られた107件の効果量について、記憶術の平均効果量は d = 0.50 でした。測定されたのは、主に表層的な事実の学習です。
慎重な評価もあります。John Dunlosky と同僚によるその2013年のレビューは、キーワード法を、文章から学ぶ際にイメージを使う方法とともに「有用性が低い」と評価しました。効果がないからではなく、「効果がイメージ化しやすい教材に限られる」ことと、「あらゆる年齢の学生にうまく機能するとは限らない」ことが理由です。習得にかかる時間や、効果がどれほど持続するのかという未解決の問題も指摘しています。
これらを合わせると、記憶術は必然的なつながりのない情報を思い出す力を大きく高め、特に学習に苦労する人に役立ちますが、適用範囲は限られます。
頭字語・頭文字の文(アクロスティック)・韻・歌:言葉を使う記憶術の役割
頭文字を使う記憶術は誰もが知っているものですが、研究の裏づけは意外なほど乏しいです。Jennifer McCabe と同僚は、64の教育機関で心理学を学ぶ学生481人を調査し、頭字語と頭文字の文(アクロスティック)が、最もよく知られた記憶術(5段階で4.43)であり、最もよく使われている方法(3.53)でもあると報告しました。記憶の宮殿(それぞれ2.91と2.19)を大きく上回っています。
実験からわかっているのは、次のことです。
- 関連のない単語には、ほとんど役立ちません。Boltwood と Blick の1970年の研究では、関連のない名詞19語について頭文字を使う記憶術を作った学生の成績は、ただ繰り返した学生と比べて、直後(16.26対15.73)も8週間後(8.26対6.77)も有意に良くはなりませんでした。同じ研究のストーリー法の条件では、時間を置いたテストで反復を上回りました。
- 順序を守る助けになります。Nelson と Archer(1972)は、頭文字を並べた手がかりの語を与えると順序どおりに思い出す成績が向上することを示しました。その向上は、より多くの単語を思い出せるためではなく、正しい位置を維持できるためだとしています。
- 項目自体をすでに知っている場合に、最も役立ちます。Morris と Cook(1978)は、関連のない単語では効果がない一方、曜日を無作為な順番で覚える場合には明確な効果があると報告しました。結論は、頭文字を使う記憶術は「項目はわかっていても、その順序に問題がある場合に想起を助ける」というものです。
Stalder(2005)は、頭字語を使った心理学の学生が、関連する試験問題で高い得点を取ることを示しました。ただし、使用を割り当てた研究ではなく、学生自身による使用を追跡した研究です。頭字語は、思い出すためのチェックリストとして使いましょう。五大湖をすべて挙げたり、手順を順番どおりに答えたりするのには適していますが、各項目が何かを学ぶのには役立ちません。
歌には条件があります。Wallace(1994)は、文章を歌にすると記憶しやすくなるのは、各節で同じ単純なメロディーが繰り返され、曲自体を覚えやすい場合だけだと示しました。一節しかない場合や、節ごとにメロディーが変わる場合は、普通に話したほうが効果的でした。Calvert と Tart(1993)は、アメリカ合衆国憲法の前文でも同様の傾向を見いだしました。4週間で8回触れた大学生では、歌で学んだ学生のほうが、読み上げを聞いた学生より多くの言葉を一字一句そのまま思い出しました(5週間後で40.3語対25.4語)。ただし、1回だけ触れた場合には、両者はほぼ同じでした。
記憶術が逆効果になるとき
記憶術は近道ですが、近道が間違った場所につながることもあります。ここでは、その六つのパターンを紹介します。
1. 記憶が急速に薄れることがあります。Wang、Thomas、Ouellette(1992)による四つの実験では、キーワード法で学んだ人は、丸暗記した人より1週間で多くを忘れました。そのうち二つでは、時間を置いたテストでキーワード群の初期の優位性が消えていました。1995年の追試では、Wang と Thomas は、文脈の中で単語を学ぶ場合と比べると、2日後にキーワード法の優位性が逆転することを示しました。対策は、方法を捨てることではなく復習です。同じ論文では、追加の学習機会による長期保持の改善は、文脈群よりキーワード群で大きくなりました。
2. 記憶術が誤ったルールを表している場合があります。PEMDAS、または「Please Excuse My Dear Aunt Sally」は、parentheses、exponents、multiplication、division、addition、subtraction(括弧、累乗、掛け算、割り算、足し算、引き算)の頭文字です。この並びは、掛け算は必ず割り算より先で、足し算は引き算より先だと思わせます。実際には、それぞれの組は同じ優先順位で、左から右へ計算するので、7 - 3 + 11 は15です。Glidden が2008年に、小学校教師を目指す381人を対象に調べたところ、演算の順序の問題の誤答率は21.7%〜78.5%でした。足し算より先に掛け算を正しく行えた人のうち、30.9%が引き算より先に足し算をし、38.0%が割り算より先に掛け算をしていました。左から右へ計算せず、まさにこの記憶術が招く間違いを犯していたのです。
3. ルールの例外が多すぎる場合があります。「I before E except after C」(C の後を除き、E の前に I を置く)という英語の綴りの覚え方は、weird、their、science では成り立ちません。イングランドの小学校向けの2009年の綴りの指導資料 Support for Spelling は、「C の後を除き、E の前に I を置くというルールは、教える価値がありません」と明言しました。文字の組み合わせが明確に「ee」の音になる場合にしか当てはまらず、該当する少数の語は直接覚えるほうが簡単です。
4. 事実が変わることがあります。「My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas」は、英語の惑星名を順番に覚える文ですが、国際天文学連合が2006年8月に冥王星を準惑星に再分類すると、最後の pizzas に出番がなくなりました。National Geographic が代わりの文を募集したコンテストでは、2008年に10歳の Maryn Smith が優勝しました。その文は冥王星を残し、準惑星のケレスとエリスを加えた「My Very Exciting Magic Carpet Just Sailed Under Nine Palace Elephants.」でした。
5. 手がかりは覚えていても、何を表すか忘れることがあります。分類の階級を学ばずに「King Philip Came Over For Good Soup」を覚えても、C が何を指すのかはわかりません。Adam Putnam による2015年の教育における記憶術のレビューは、頭文字を使う記憶術に、その人気にもかかわらず慎重な姿勢を示し、「記憶術を学習の中心的な方略ではなく、想起を助けるものとして扱う」ことを勧めています。
6. 急いでいるとイメージが作れません。1968年のペグ法の研究で、Bugelski、Kidd、Segmen は、1項目あたり4秒か8秒ある場合にはペグが役立つ一方、2秒では役立たないことを示しました。リストを大急ぎで進めていると、イメージが形になる時間が足りず、記憶術がまったく役立たないことがあります。
自分用の記憶術を作る5つのステップ
ステップ1:必然的なつながりのない内容か確かめます。すでに理解していることから答えを導けないか、考えてみましょう。導けるなら、その土台となる内容を学びます。記憶術が力を発揮するのは、名前、リスト、順序、語彙、記号、日付です。
ステップ2:目的に合う種類を選びます。覚えたいものに合わせて、記憶術を選びましょう。
| 覚えたいもの | 最も適した記憶術 | 適している理由 |
|---|---|---|
| だいたい知っているリストの順番 | 頭字語または頭文字の文(アクロスティック) | 頭文字が各項目の手がかりとなり、順序を固定します |
| スピーチや手順のような、順序のある長いリスト | 場所法 | なじみのある道順が、決まった一連の手がかりになります |
| 途中の番号からでも思い出したいリスト | ペグ法 | 数字ごとに手がかりがあり、どこからでも始められます |
| 外国語の単語や専門用語 | キーワード法 | 音のつながりとイメージで、語と意味を結びます |
| 詩や定義のような、正確な言い回し | 歌または韻 | 韻律とメロディーが、次に来る言葉を絞ります |
| 長い数字 | チャンキング | 意味のある少数のかたまりにすると、記憶に収まりやすくなります |
ステップ3:イメージの中で、もの同士を関わらせます。カモの隣に鍋があるだけでは弱く、カモが鍋をヘルメットのようにかぶっていると強く結びつきます。Wollen、Weber、Lowry(1972)は、二つの物が描かれた絵を使い、奇妙か普通か、互いに関わっているか単に並んでいるかを変えて、人々に見せました。奇妙さによる違いはありませんでした。違いを生んだのは関わりです。互いに関わる絵は言葉だけの対照条件より成績が良く、並んでいるだけの絵は、絵がまったくない場合より成績が悪くなりました。奇妙さが主に役立つのは、それが際立つときです。McDaniel と Einstein(1986)は、奇妙なイメージを普通のイメージと混ぜて提示すると、奇妙なほうがよく覚えられることを示しました。
ステップ4:良いものを借りるか、自分で作ります。記憶術は自作しないと効果がない、とよく言われます。しかし、研究結果は一様ではありません。ラテン語を学ぶ高校生363人を対象とした実験で、Campos と同僚(2004)は、キーワード法が丸暗記を上回るのは、鮮明なイメージを思い浮かべやすい単語の場合だけだと報告しました。また、二つ目の実験では、そのような単語について、ほかの生徒が作ったキーワードのほうが、自分で作ったものより効果的でした。Putnam のレビューは、両方を使い分ける立場です。既成の記憶術は、年齢が低い人、未訓練の人、時間のない人の助けになります。一方、練習を重ね、時間もある人には、自作する価値があります。
ステップ5:テストして、間隔を空けます。答えを隠し、手がかりを見て思い出します。答え合わせをしたら、翌日、数日後、翌週にもう一度繰り返します。記憶術で取り込んだ情報を、こうして定着させます。
記憶術・アクティブリコール・間隔反復を組み合わせる
三つの方法にはそれぞれ違う役割があり、組み合わせると最も効果的です。
- 記憶術は、意味のつながりがない情報を、イメージしたり口にしたりできるものに変え、思い出す出発点となる手がかりを作ります。
- アクティブリコール は、読み直す代わりに記憶から答えを引き出すことで、手がかりから答えに至る道筋を強めます。
- 間隔反復 は、忘れかけたタイミングで各項目をもう一度学び直すことで、数日ではなく数か月にわたって記憶を保ちます。
Dunlosky の2013年のレビューでは、十種類の方法のうち「有用性が高い」と評価されたのは、練習テストと分散学習の二つだけでした。記憶術は、これらの代わりにはなりません。想起練習で、情報をより引き出しやすくしてくれます。
Miyatsu と McDaniel は2019年に、リトアニア語40語を使ってこの組み合わせを検証しました。そのうち一つの実験では、キーワード法に想起練習を組み合わせた学生は、キーワード法だけに頼った学生より1週間後に多くの単語を覚えていました。
三つを単語カードで使う簡単な方法は、表に語、裏に意味を書き、その下に記憶術を添えることです。復習では、まず記憶術を使わずに答えを思い出し、行き詰まったときだけヒントとして使いましょう。
読んだ内容を記憶術に変える方法
記憶術が必要になる情報の多くは、何かを読んだり見たりしているときに出てきます。教科書にある危険因子のリスト、ビジネス書のフレームワーク、講義で説明されるプロセスの段階などです。試験前夜に探し回るのではなく、出会ったときに拾っておきましょう。
- 読みながら、必然的なつながりのない部分をハイライトします。Glasp のウェブハイライターを使えば、ウェブページや PDF 上のリスト、順序、名前、用語に印をつけられます。専用の色を決めておくと、「覚えるべきもの」と「面白いもの」が混ざりません。
- ハイライトに記憶術を書き添えます。ハイライトした箇所のメモとして追加すれば、手がかりと出典を一緒に残せて、頭文字の文(アクロスティック)を元のリストと照合できます。
- 本や講義の内容も取り込みます。Kindle のハイライトをインポートして、読書で出会ったリストを集めましょう。また、YouTube Summaryで講義のタイムスタンプつき文字起こしを取得すれば、教授が七つのステップを説明する箇所をハイライトできます。
- 候補を出し、確認します。Glasp の AI チャットに、ハイライトしたリストに使えるキーワードや頭文字の文(アクロスティック)を三つ提案してもらいましょう。一つ選んだら、自分が思い浮かべやすいイメージに置き換え、すべての項目が正しい順序で入っているか確かめます。生成された頭文字の文では、項目が抜けたり順番が入れ替わったりすることがあるためです。
- 手がかりを使って自分をテストします。ハイライトしたリストをそれぞれ問題にして、思い出してみましょう。記憶術は行き詰まったときだけ使い、復習の間隔を空けます。何度もうまくいかない記憶術は、作り直しましょう。
よくある質問
記憶術には、主にどのような種類がありますか?
代表的なのは、頭字語、頭文字の文(アクロスティック)、韻、歌、チャンキング、場所法(記憶の宮殿)、ペグ法、キーワード法、ストーリー法です。言語を使う記憶術は文字や音を利用し、視覚を使う記憶術は頭の中のイメージを利用します。実験室の研究では、通常、視覚を使う方法のほうが大きな効果を示します。
記憶術の具体例を教えてください。
虹の色を覚える ROY G BIV は、最もよく知られた例の一つです。ほかにも、五大湖を覚える HOMES や、各月の日数を覚える「Thirty days hath September」があります。あまり有名ではありませんが、研究でよりよく検証されているのが、スペイン語の pato がカモを意味すると覚えるために、鍋をかぶったカモを想像する例です。
記憶術は本当に効果がありますか?
はい。それ自体に意味のつながりがない情報には効果があります。Atkinson と Raugh の1975年の実験では、キーワード法で学んだ人はロシア語120語の72%を思い出し、対照群は46%でした。また、2021年のメタ分析では、記憶術の平均効果量は d = 0.50 でした。ただし、高まるのは思い出す力であって、理解ではありません。復習しなければ、効果の一部は数日で薄れることがあります。
最も効果的な記憶術は何ですか?
実験室で直接比較すると、イメージを使う方法が優れています。Roediger による1980年の比較では、20語のリストを正しい位置で思い出せた数は、場所法で平均13.6語、ペグ法で12.5語だったのに対し、反復学習を行った対照群では5.8語でした。外国語の語彙では、キーワード法の効果が最もよく裏づけられています。最も広く使われている頭文字の記憶術は、主に順序を覚える助けになります。
記憶術は試験勉強に向いていますか?
用語、リスト、手順、記号、名前、日付など、思い出す力を問う試験には向いています。考え方を説明したり応用したりする問題にはあまり役立ちません。そのため、必然的なつながりのない部分に使い、残りの時間は練習問題に取り組みましょう。試験の数日前から始めておくことが大切です。
記憶術はどう作ればよいですか?
内容に必然的なつながりがないことを確かめ、目的に合う方法を選びます。順序には頭文字の文(アクロスティック)、長い並びには記憶の宮殿、語彙にはキーワード法、数字にはチャンキングです。イメージの中で、もの同士を関わらせ、記憶術を元の内容と照合し、数日かけて手がかりから思い出す練習をします。
記憶術は語学学習にも役立ちますか?
はい。キーワード法は第二言語の語彙学習のために考案されました。Atkinson のスペイン語の実験では、キーワード法で学んだ人が単語の88%を思い出したのに対し、丸暗記で反復した人は28%でした。復習しなければ効果の一部は薄れると考え、想起練習と組み合わせましょう。2019年の実験では、キーワード法に自己テストを組み合わせると、キーワード法だけの場合より1週間後の成績が良くなりました。
記憶術と記憶の宮殿は、どう違うのですか?
記憶の宮殿は、記憶術の一種です。「記憶術」は、情報を思い出しやすい手がかりに結びつけるあらゆる方法を指します。記憶の宮殿、別名「場所法」は、なじみのある道順に沿ってイメージを置いていく、特定の方法です。最も強力な記憶術の一つであり、習得にも最も手間がかかります。
まずは一つのリストから
記憶術は、学習の仕組み全体ではありません。なかなか覚えられない特定の情報、つまり、必然的なつながりのないリスト、外国語の単語、誰かが決めた順序を扱うための、用途を絞った道具です。そうした情報に使う場合、特にイメージを使う方法には、強い研究の裏づけがあります。何にでも使おうとすると、時間を浪費し、誤ったルールを覚えてしまうおそれがあります。
ですから、授業の内容を丸ごと記憶術で覚えようとする必要はありません。今週、何度も忘れてしまうリストを一つ選び、適した方法で鮮明なイメージか文を一つ作り、明日と翌週に自分をテストしてみましょう。
まずは今読んでいるものから始めましょう。Glaspでリストをハイライトし、そこに記憶術を書き添えたら、あとは想起練習で定着させます。