問いを並べ替える技術が、創造性と問題解決を同時に生む
Hatched by naoya
Aug 21, 2026
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「良いアイデアが出ない」とき、本当に不足しているのは発想力だろうか。もしかすると、問題の置き場所が間違っているだけかもしれない。
検索窓に「請求書」と入力した人が、実際には「先月の取引先への支払い状況」を探していることがある。会議で「売上を伸ばせ」と言われたチームが、実際には「顧客が途中で離脱する理由を知りたい」のかもしれない。お題が曖昧なままでは、どれほど優秀な人でも、曖昧な答えしか返せない。
ここに、情報アーキテクチャと大喜利という、一見すると遠い二つの領域が接続する。前者は情報に名前をつけ、分類し、順序や親子関係を与える技術である。後者は、与えられたお題に対して、意外性のある答えを返す創造的な問題解決である。
共通しているのは、答えをひねり出す能力ではない。対象の見え方を編集する能力だ。情報を探しやすくする人も、笑いを生む人も、世界をそのまま受け取らず、別の切り口で再配置している。
創造性は、答えではなく「お題の設計」から始まる
多くの人は創造性を、何もないところから新しいものを生む力だと考える。しかし実際には、創造的な仕事の大部分は、すでに存在する要素を別の関係に置き直すことで生まれる。
たとえば、台所の引き出しを考えてみよう。調味料、箸、缶切り、輪ゴムが無秩序に入っていると、必要なものを見つけるたびに小さな探索が発生する。そこで、使用頻度、用途、サイズなどの基準で分類すると、同じ物理空間が急に使いやすくなる。新しい道具を発明したわけではない。名前と関係を変えただけで、能力が引き出されたのである。
大喜利にも同じ構造がある。お題に対して面白い答えを返す人は、単に奇抜な単語を知っているのではない。お題を文字通り受け取るだけでなく、そこに潜む前提をずらす。
「こんな学校は嫌だ」というお題に対して、学校設備や教師の失敗を答えることもできる。しかし、学校を「知識を学ぶ場所」ではなく「大人が子どもを評価する場所」と捉え直せば、答えの範囲は一気に広がる。さらに学校を「毎日通う小さな社会」と見れば、別の方向の答えが生まれる。
面白さは、対象そのものの中に固定されているのではない。どの分類に入れるか、どの順序で見るか、何と何を隣り合わせるかによって立ち上がる。
問題解決力とは、与えられた問題に答える力だけではない。答える前に、問題がどんな形をしているかを組み替える力である。
情報の迷子と、思考の迷子は同じ構造を持つ
ウェブサイトで利用者が迷うとき、よく「情報が多すぎる」ことが原因だと考えられる。だが、情報量が多くても、名前や分類が利用者の目的に合っていれば、人は比較的スムーズに動ける。逆に、情報が少なくても、分類が現実の使い方とずれていれば迷子になる。
自治体のサイトを例にしよう。利用者が求めているのは「福祉政策」ではなく、「子どもの医療費を安くしたい」「引っ越し後の手続きをしたい」「粗大ごみを出したい」といった具体的な目的である。行政内部の組織図に沿って情報を並べると、担当部署は見つかっても、利用者の用件にはたどり着きにくい。
これは思考にも起きる。会議で「若者の消費が落ちている」という課題を扱うとき、問題をそのまま経済指標のカテゴリーに置くと、価格、所得、景気といった変数ばかりが見える。しかし「若者は何にお金を使いたくないのか」「所有より参加を選んでいるのではないか」「支出の障壁は金額ではなく、失敗への不安ではないか」と分類を変えると、調査すべき対象が変わる。
つまり、分類は中立的な整理ではない。分類は、何を見えるものにし、何を背景に追いやるかを決める。情報アーキテクチャは画面の構造だけでなく、利用者の行動可能性を設計している。同じように、問題の定義は解決策の候補をあらかじめ増減させている。
ここで重要なのは、分類を一つに固定しないことだ。優れたサービスは、商品を「ブランド別」「価格帯別」「用途別」など複数の入口から探せる。優れた思考も、問題を一つの説明だけで閉じない。
売上不振を「営業の弱さ」と見ることもできるし、「商品の価値が伝わっていない」と見ることもできる。「顧客が選ぶ場面に存在していない」と見ることもできる。三つの見方は、それぞれ異なる行動を要求する。営業研修、メッセージの改善、販売チャネルの変更である。
問題を解けないとき、解決能力を疑う前に、問題が入っているフォルダーを疑うべきだ。
大喜利的思考とは、現実を悲観しないための技術である
大喜利の価値は、場を盛り上げることだけではない。そこには、答えがすぐには見えない状況に対する態度が含まれている。
大喜利では、お題に対して唯一の正解を探さない。限られた時間の中で、いくつかの仮説を出し、意外性、納得感、文脈との相性を試す。最初の答えが弱くても、「別の角度ならどうか」と再配置を続ける。この過程には、問題が解決できないときにも思考を止めないための実践知がある。
職場の例を考えてみよう。新しい社内システムを導入したが、誰も使ってくれない。最初の反応は「社員のITリテラシーが低い」「研修が足りない」というものかもしれない。ここで大喜利的にお題を変える。
「社員が使いたくないシステム」ではなく、「社員が使う理由を一秒で説明できないシステム」と考える。「入力が面倒なシステム」ではなく、「入力した情報が、入力者の利益に戻ってこないシステム」と考える。さらに「システムを使わせる問題」ではなく、「仕事の流れの中に自然な入口を作る問題」と考える。
このような言い換えは、単なる言葉遊びではない。原因の仮説と、介入点を変えている。利用者を責める発想から、設計を見直す発想へ移っている。
ただし、何でも面白く言い換えればよいわけではない。大喜利的思考が問題解決になるためには、三つの条件が必要だ。
第一に、現実との接続があること。意外な見方でも、観察可能な事実から離れすぎてはいけない。第二に、行動への変換ができること。新しい見立てが、調査、試作、質問、配置変更などの次の一手につながる必要がある。第三に、複数案を許すこと。一つの気の利いた説明に執着せず、競合する見立てを並べることが重要である。
創造性は、現実逃避ではない。現実に対して、別の入口を増やすことである。
「再分類の四段階」で、行き詰まりを動かす
情報設計と大喜利的な問題解決を、実務で使える一つの方法にまとめてみよう。行き詰まったときは、次の四段階で問題を再分類する。
1. 名前を疑う
最初に、その問題を呼んでいる名前を書き出す。「採用難」「顧客離れ」「会議の非効率」「学習意欲の低下」。そして、その名前が何を前提にしているかを問う。
「採用難」は、本当に応募者が少ない問題なのか。それとも、必要な人材像を定義できていない問題なのか。「会議の非効率」は、時間が長い問題なのか。それとも、決めるべきことが決まっていない問題なのか。
名前は便利だが、便利すぎる。短い言葉にまとめた瞬間、異なる原因が一つの箱に入ってしまう。
2. 分類軸を増やす
次に、問題を少なくとも三つの基準で分類する。人、時間、目的という軸が使いやすい。
人の軸なら、顧客、社員、管理者、未利用者に分ける。時間の軸なら、利用前、利用中、利用後に分ける。目的の軸なら、知る、比較する、決める、実行する、振り返るに分ける。
たとえば、オンライン講座の離脱を調べるなら、受講者全体を一つの集団として扱わない。「登録したが初回視聴前に離脱した人」「一度視聴したが二回目に来なかった人」「課題で止まった人」では、必要な支援が異なる。
3. 親子関係を入れ替える
ある情報や原因を、主役と脇役のどちらに置くかを変える。売上を最上位の目的に置くと、広告や値引きが中心になる。しかし、継続利用を最上位に置くと、初回体験、習慣化、問い合わせ対応が中心になる。
組織でも同じである。部署を中心に仕事を分類すると、引き継ぎが自然に見える。顧客の行動を中心に分類すると、部署間の断絶が問題として見えてくる。親子関係の変更は、責任の所在と優先順位を変える。
4. 一つだけ異物を隣に置く
最後に、通常は同じ棚に入れない要素を一つ組み合わせる。図書館の案内に「初心者が次に読む本」という視点を加える。社内会議に「会議に参加していない人が誤解しそうな点」という視点を加える。商品ページに「買わない理由」という欄を置く。
異物は、奇抜さのために置くのではない。既存の分類では見えなかった関係を発見するために置く。大喜利の意外性を、実務における観察装置として使うのである。
この四段階を一枚の紙で行うなら、中央に現在の問題名を書き、周囲に別の名前、分類軸、主役にする対象、隣に置く異物を記入する。答えを出す前に、問題の地図を四枚作る。解決策の質は、地図の数と精度に大きく左右される。
すぐに使える実践と、創造性の測り方
明日の会議でこの方法を使うなら、最初の十五分を解決策の議論に使わない。まず、参加者全員に「この問題を別の名前で呼ぶなら何か」を一人三案書いてもらう。次に、利用者、時間、目的のうち一つの分類軸を選び、問題を分解する。
その後、最も有望な見立てを一つ選ぶのではなく、異なる見立てを二つ残す。片方が正しいと決めつけず、二つの仮説を区別できる小さな調査や実験を設計する。
たとえば、アプリの継続率が低い原因について、「価値が伝わっていない」と「使う習慣が形成されていない」という二つの仮説を置く。前者なら初回画面の説明を変え、後者なら通知のタイミングや利用頻度を変える。小さな変更を別々に試せば、議論は印象から検証へ移る。
ここでの創造性は、アイデアの奇抜さだけでは測れない。次の三つで評価するとよい。
- 見えなかった利用者や原因を、見える位置に移せたか
- 問題に対する新しい行動の選択肢が増えたか
- 新しい見立てを、小さな実験で確かめられるか
面白いだけの答えは、会話を一瞬動かす。良い再分類は、組織の行動を変える。両者を分けるのは、現実への接続と検証可能性である。
Key Takeaways
- 問題が解けないときは、答えを増やす前に、問題の名前を三通り言い換える。
- 情報を一つの分類に閉じ込めず、人、時間、目的など複数の軸で見直す。
- 「誰の問題か」「いつの問題か」「何を達成する問題か」という親子関係を入れ替える。
- 意外な要素を一つ隣に置き、既存の分類では見えなかった関係を探す。
- 面白い見立てをそのまま信じず、異なる仮説を小さな実験で比較する。
結局のところ、情報を探しやすくすることと、問題を解きやすくすることは、別々の技術ではない。どちらも、混ざり合った現実に境界線を引き、名前を与え、関係を並べ替える行為である。
そして大喜利的な創造性とは、その境界線を一時的に動かしてみる勇気だ。常識的な分類は、世界を理解するために必要だが、問題を解決するには不十分なことがある。ときには、主役と脇役を交換し、入口を変え、まったく別の棚に対象を置く必要がある。
未来を変えるアイデアは、無から現れるのではない。見慣れた問題を、まだ誰も試していない場所に置き直したときに現れる。
だから、創造性に自信がない人ほど、すぐに面白い答えを出そうとしなくていい。まず問いを整理し、次に問いを疑い、最後に問いを遊ばせる。その順番を守れば、創造性は特別な才能ではなく、現実への新しい入口を設計する習慣になる。
Sources
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