刑事の境界線 (宝島社文庫)

刑事の境界線 (宝島社文庫)

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鈴木陽介

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半グレはヤクザのように結束しない。大企業が新商品を打ち出すのではなく、小さなベンチャー企業が共同でプロジェクトを立ち上げるのに似ている。誰が主犯格なのかを特定するのも難しい。だからこそ、やり甲斐がある。情報を集めて裏を取る。為井は、久しぶりに自分と繫がりのない組織の捜査に、楽しささえ感じていた。  悪人は逮捕されるまでは犯罪者ではない。悪人を犯罪者にするのが警察の仕事だ。警察は誰を犯罪者にするかを選定し、一斉に襲いかかる。

容疑者であるガキどもに情報を流してしまった以上、もう引き返せない。タバコと同じだ。ほんの少し関わっただけで、まるでドミノが倒れるように証拠隠滅に奔走する羽目になる。倒れ始めたドミノは途中で止めることはできない。人間は自分の当たり前を守るためなら、どんなことでも正当化しようとする生き物だ。

「そうか……。まともな刑事に戻りたかっただけなんだけどな。どうやら浮かれちまったみたいだ。春だからか」  為井は乾いた笑い声をあげた。 「残念だったな」  松野は淡々と言う。 「人間、浮かれちまうと必ず失敗するんだ。これは、俺が昔憧れた先輩からの受け売りだがな。元刑事の勘は当たる。あんたも気をつけな」

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