大地球史 生命が地球をつくった 46億年の新しい進化史

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しかしながら、この真実には、あまり評価されていないもう1つの側面がある。それは、生命もまた環境に変化をもたらす、

長年の定説とは裏腹に、生命は地球の歴史を通して圧倒的な地質学的影響力となっており、氷河や地震や火山に匹敵する、あるいはそれを 凌ぐ威力を発揮してきたのだ。過去数十億年にわたり、微生物からマンモスまで、あらゆる生命体が陸と海と大気を変容させ、宇宙の軌道を周回する岩石のかたまりを、私たちが知るこの世界へと作り変えてきた。生物は、その生息地で不可避的に起きる進化プロセスの生産物であるだけでなく、その環境の調整役であり、自身の進化に自発的に関わってもいる。私たち人類もほかの生物も、地球の住民である以上に、地球 そのもの なのだ。この星の からだ から誕生した命であり、この星全体の生態系を循環させる原動力なのである。地球と生物は密接に結びついており、一体のものとして捉えることができる。

私は、地球と生命体との相互依存について研究するなかで、「地球は生きている」という古くから議論を呼んできた概念に何度も行き着いた。

システム科学者は、システムを「全体で1つのものとして機能する構成要素の組織化されたネットワーク」と定義している。システムは、分子のように小さく単純なものから、宇宙のように広大で複雑なものまである。一部の科学者は、微生物であれ森林であれ、惑星であれ、どんな形態の生命体も、定義上は生命システムだと主張する。

実際、地球に生息する微生物の大半、おそらく 90%以上が、地下深くに生息している可能性がある。そうした地下圏微生物は、地表に生息する微生物とはかなり異なる傾向にある。原始的で動きが遅く、繁殖はあまりせず、おそらくは何百万年も生きている。エネルギーの獲得方法も独特で、酸素の代わりに 岩で呼吸 しているという。地上のほとんどの生物が絶滅してしまうような、天変地異をも乗り越えられるようだ。海洋や大気中にいる微小な生物の多くと同じように、地球の地殻内で生きる個性的な微生物たちも、周囲の環境に適応するだけでなく、その環境を変化させてもいる。地下の微生物は、とてつもない規模の洞窟を作り、鉱物や貴金属を濃縮し、炭素や栄養素の地球規模での循環を調整している。微生物は大陸の形成にも貢献しており、まさに地上の全生命体の礎を築いた可能性さえある。

地殻変動と絶え間ない生命の営みによって、地球はほかのどの惑星とも比較にならないほど多種多様な鉱物を得た。地球に比べると、月や水星、火星には鉱物が乏しく、合わせてもせいぜい数百種である。地球の鉱物がバラエティー豊かなのは、生命の存在の 賜物 というだけでなく、その生命の特異性によるところが大きい。

カーネギー研究所の地球科学者ロバート・ヘイゼンと、統計学者のグレタ・ハイスタッドが算出したところによれば、2つの惑星が同じ鉱物種の組み合わせを持つ確率は、 10 の322乗分の1なのだとか。一方、地球と似た環境の惑星は、この宇宙に 10 の 25 乗個しかないと推定されている。と、すれば、地球ほどの鉱物多様性を持つ惑星は、ほぼ絶対に存在しないといっていいだろう。「

微生物による地殻改造は、陸上に限ったことではない。海底や、その下でも起きている。ある地域では、海洋地殻に生息する微生物が硫黄を硫酸塩に変えていた。硫酸塩は水溶性なので、海中に溶け出し、ほかの生物が摂取しやすい栄養素となる。海底堆積物は、地球最大のメタン貯蔵庫ともいわれているが、そのうちの 80%は微生物が生成したものだ。もしそのメタンがすべて大気中に放出されれば、この星を覆う目に見えない温室効果ガスの層が著しく厚くなり、地球温暖化は一気に加速するだろう。しかし、ある別の微生物群は、海底堆積物から放出されるメタンの 90%を、水面に到達する前にリサイクルしている。

大さじ1杯の健康な土には、今生きている全人類の何倍もの数の生物が存在しうる。それだけではない。たった1グラムの肥沃な土に、数十億の微生物や細菌、数百万の原生動物や藻類、数百の線虫、数十匹のダニやトビムシ、そして1000メートル近い糸状菌がいる可能性もあるのだ。

ギザの大ピラミッドやノートルダム大聖堂の石灰岩造りのファサードがプランクトンへの密かな記念碑というならば、パリ万博の入場門は〝明確な記念碑〟だ。石や金属、ガラスを使ったビネの有機的な造形物は、文明の〝進化〟を讃えたものだった。何より、人間の構造にも匹敵するくらい、いや超越するくらいに、とてつもなく複雑で美しい構造を生み出す進化の力への称賛を表していた。地球の生態系におけるプランクトンの重要性がわかってきた今、文字どおり、人類の偉業を祝う入り口として空高くそびえ立つこれらのアーチは、新たな意味を帯び始めた。大聖堂にまでなった1匹のプランクトンは、普段気にも止められないものが人々を魅了し、通常は主張しないものが他者に大きな影響を与えうることを物語っている。「私が存在しなかったら、あなたがたも存在しなかった」。プランクトンがそう語りかけているようだ。「私がいなかったなら、どんな偉大な建造物も誕生していなかった」

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