はじめに ケアという言葉を聞くと、どんなことを思い浮かべるだろうか。 編者の一人である西村は、最近、登校する小学生たちが、待ち合わせ場所で集まって列をなしていく様子をみて、ふと自分の子どもの頃のことを思い出した。
毎朝、近くに住んでいる数人と集まるとき、私の妹は同級生(だったと思う) の男の子を誘いに行っていた。その子はうまく話すことができず、いつも落ち着かない様子だった。妹が声をかけながら、時には手をつないで歩くことで一緒に登校できていた。それは、特別なことではなく、私たちにとっての日課だった。ときどきその男の子のお母さんが出てきて、誘ってくれてありがとう、と言っていたのを記憶
この、あたりまえの関心や行為からお世話までの幅が、ケアにはある。登校時に集まる場所や養護学校という場や制度、状況によっても、その行為に与えられる意味が変わる。行為のみではない。組織や環境、法や規範も、ケアの意味や価値に関わる。
近年、ケアは、さまざまな学問分野で、また当事者の間で多角的に議論されている。その背景には、少子高齢化の進行のために、ケアを担う人が減る一方でケアを必要とする人が増え、制度・人材・地域社会においてその対応を迫られるという問題意識がある。しかし、そうした問題の捉え方は、ケアというテーマをある
ここまで本書の構成を紹介したが、必ずしも章の順に読むのではなく、読者の関心にもとづいて読んでもらえたら幸いである。そのための手がかりとして、 ケアを学ぶ人の目的別ガイド(目次の直後) も用意している。離れたところにある章どうしも、共通の論点をもち有機的につながっていること、どの章も複数の論点を包含していることがわかっていただけると思う。
1章 ケアとは何か 宮坂道夫 キーワード 主体 弱さ 依存 パターナリズム ヒューマン・ケアリング 利益相反
1 ケアという言葉の多様な意味 ケアの主体 ケアという、本書全体のテーマになっている言葉は、私たちの暮らしの中で頻繁に使われている。しかし、この言葉の意味は、使われる状況や使う人によってかなり異なっている。
ケアの対象 では、職業的ケアと非職業的ケアとに共通するものがあるとすれば、それはどんなものだろうか。これを考えるために、今度はケアをされる側、つまりケアの対象である被ケア者の方に注目してみよう。ケアの対象となっているのは、どんな人たちか。
2 ケアの本質としての、弱さと依存 「弱っている」ということ このように、ケアの対象はきわめて多様であるのだが、これらのすべてに共通する性質を見いだすことができるだろうか。 具体的なものを題材に考えてみるとよいかもしれない。
「依存している」ということ しかし、現時点で「弱っている」わけでもないし、この先「弱っている」状態になるというわけでもない存在に対しても、私たちはケアを行う。 その典型が子どもである。私たちは子どもに対して、格別に手厚いケアを行う。その理由は、必ずしも彼らが弱いからではない。
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