先ほど登場した結核も日本で多い感染症です。途上国に多い病気というイメージとはうらはらに、日本の発症率は2023年においても米国の2・6倍です。
2020年4月にニューヨーク市衛生局が公表した統計によると、新型コロナウイルスへの感染率には明らかに人種差があり、高いほうからアフリカ系、ラテン系、欧州系、アジア系の順でした*1‐6。調査した集団に高齢者が多いと感染率が高くなる恐れがあるため、データは年齢で調整してあります。やはりアジア系は新型コロナウイルスに感染しにくいようです。 2024年になって、日本で興味深い論文が公表されました。東アジア人に多い「お酒に弱い人」は、新型コロナウイルスに「強い」というのです*1‐7。
2020年に提唱された「日本人はお酒に弱くなる方向に進化した」という説 です。コンピューターをもちいた大規模な分析により、日本人は世代をへるごとにアルコールを分解する力が弱くなるように遺伝子が変化したことが明らかになりました*1‐8。
古代日本で稲作が広まった頃、水田には有害な病原体が多数生息していました。細菌やウイルスだけでなく、マラリアを媒介するハマダラカの幼虫もいれば、感染すると重い肝障害を招く日本住血吸虫による被害も深刻でした。しかし、お酒に弱い人は有害物質アセトアルデヒドが血液に多く溶けているため、病原体が体内に侵入しても活発に活動できません。そうなれば、お酒に弱い人のほうが生きのびやすいということになります。
日本が欧米諸国より少なかったのは皮膚がん、女性の乳がん、男性の前立腺がん、膀胱がん、脳・中枢神経系がん、悪性リンパ腫や白血病を含む血液がんでした。 その一方で欧米諸国を上回っていたのは、まず胃がんで、約5~ 10 倍高く、ついで肝臓がんが約2倍、胆のう・胆管がんが約2倍、膵臓がんが約1・5倍でした。高齢化の影響を受けないように調整したデータです。
このようにグルテンフリーは、本来、グルテンの摂取で腸に障害が起きるセリアック病や、小麦ないしグルテンにアレルギーがある人のための治療法でした。セリアック病は腹痛や下痢が起きる自己免疫疾患で、日本の発症率は欧米の 20 分の1程度です。その理由は、セリアック病の発症とかかわる遺伝子を持つ人が欧米には 25 ~ 30%いるところ、日本には約0・3%しかいないからです。
また、グルテンフリーによって総コレステロール、空腹時血糖、そして体格指数(BMI) が上がることも報告されています*2‐1。BMIは体重(㎏) を身長(m) の2乗で割って算出し、 18・5以上 25 未満を普通体重と判定する肥満の国際尺度です。「グルテンフリーでダイエット!」という記事を見かけることがありますが、実際は太るわけです。心筋梗塞をはじめとする心臓病の発症率が高まることを示した論文もあります。
やっかいなのは、 日本人を含む東アジア人は、ただでさえ内臓脂肪がつきやすい ことです。この傾向は男性に強く、欧州系の人は体がどんなに大きくても大部分が皮下脂肪です*2‐3。
皮下脂肪が比較的安全な脂肪であることから、日本と米国では男性の腹囲の基準値が異なり、日本人が 85 ㎝未満なのに対して米国人は約102㎝( 40 インチ) までOKです。
こういう人の比率は人種間で差があり、平均すると、アフリカ系の人が筋肉全体の約 70%が白筋であるのに対し、欧州系は 50 ~ 60%が白筋、日本人を含むアジア系は逆に 70%が赤筋とされています*2‐5。アフリカ系の人がオリンピックの短距離走で活躍するのはこのためのようです。 赤筋と白筋の割合はトレーニングによってある程度変化するものの、大きく変わることはありません。鍛えることで太くなるのは大部分が白筋なので、日本人が筋肉をつけようと思ったら、もともと少ない白筋を集中的に鍛えることになります。これは効率が悪いうえに、もっと悲しいのは、苦労して筋肉を1㎏増やしても基礎代謝量が1日あたりせいぜい 20、わずかキャラメル1粒分のカロリーしか増えないことです。これによる体重の減少は年に1~2㎏。筋力トレーニングだけで基礎代謝を十分に高めるのは難しいでしょう。
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