21世紀を動かす思想 加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピング (集英社新書)

21世紀を動かす思想 加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピング (集英社新書)

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motonobu Isoya

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この章で焦点を当てる「防御的加速主義(Defensive Accelerationism)」、あるいは後述のようにその頭文字「d」に多様な意味を込めて「d/acc(ディー・エー・シー・シー、あるいはディーアック)」と呼ばれる考え方です。  このd/accを提唱したのは、暗号資産イーサリアム(Ethereum) の共同創設者として世界的に知られるヴィタリック・ブテリンです。彼は、e/accの熱狂的な技術楽観主義とも、またAIのリスクを過度に悲観視する一部の「ドゥーマー(破滅論者)」的な意見とも異なる、よりニュアンス豊かで、人間中心的なテクノロジー発展の道筋を模索しようとしています。

テクノロジーの力を信じつつも、その力を人間の幸福と社会全体の調和のために賢明に用いる道を探る、責任あるテクノ楽観主義の姿と言えるかもしれません。

2025年5月には彼ら二人と、プルラリティコミュニティメンバーたちによる大著『PLURALITY』の日本語版も刊行されました。オンライン/オフラインを問わない複数の対話と、複数メンバーによるGithub(ギットハブ:ソフト開発プラットフォーム) を使った執筆は、プルラリティの思想を体現するものとなっています。

むしろ、プルラリティの核心にあるのは、「社会や文化におけるさまざまな『差異(Differences)』を、単に容認したり尊重したりするだけでなく、それらの差異をむしろ創造的なエネルギーの源泉として捉え、多様なアクターが互いに協力し合い、共通の課題解決や価値創造に取り組むための、新しいテクノロジー、制度、そして文化を積極的に設計・構築していく」

現代は、しばしば「ポストトゥルース」の時代とも呼ばれます。客観的な事実や専門家の知見よりも、個人の感情や信念、あるいは特定の集団の物語が重視され、何が真実で何が虚偽かを見極めることが極めて困難になる状況にあります。

未来学の主要学派:経験的、批判的、行動志向的アプローチ

ワックは、シナリオプランニングを単なる予測技法ではなく、「経営者の認識を変革する(Changing the Mindset of Managers)」ためのプロセスとして捉え、シナリオが意思決定に影響を与えるためには、それが単なる分析結果ではなく、経営者の心に響く「記憶に残る物語」として提示されなければならないと強調しました。

加速主義(特にd/acc) とプルラリティは、 現状の社会システムに対する問題意識(非効率性、不公正性、分断など) と、テクノロジーがそれらの解決に貢献しうるという期待感を共有している 点で、根底でつながっています。特に

そのとき必要なのは、「バランス感覚」でも「中庸」でもありません。むしろ、相反する価値観を新たに「統合」する創造的な力です。速さと熟慮、効率と公正、成長と持続可能性。単にこれらの「間を取る」のではなく、新たな論理で包摂していく必要があるのです。

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