**プロジェクト・ヘイル・メアリー(上)**は、記憶を失った状態で目を覚ました主人公が、自分が誰なのか、なぜ宇宙船のなかにいるのかを、科学的な推論を一つずつ積み重ねながら解き明かしていく物語だ。
冒頭、彼は重力の計測(落下時間から加速度を割り出し、_ここは地球ではない_と気づく)、太陽の自転速度の観測(_別の太陽系にいる_と判明)といった実験を通じて、自らの置かれた状況を再構築していく。やがて彼は学校教師であった自分を思い出し、〈ヘイル・メアリー〉号が人類を救うための片道ミッションだったことを理解する。
物語の核心にあるのがアストロファージだ。これは太陽からエネルギーを盗み、ペトロヴァ・ラインを形成する微生物で、質量変換(E=mc²)によって途方もないエネルギーを蓄え、赤外線を推進力として宇宙空間を移動する。太陽が暗くなりつつあり、人類滅亡まで残された時間はわずか。各国が国境を越えて協力し、この危機に立ち向かう様子が回想を通じて描かれる。
上巻のもう一つの山場が、別の星系で出会う異星人ロッキー(エリディアン)との交流だ。アンモニアを呼吸し、音で「見て」、六進法を使い、写真記憶を持つこの存在と、主人公は物理学を共通言語として少しずつコミュニケーションを築いていく。
科学者の問題解決の過程そのものをスリルに変える構成と、ユーモアあふれる一人称の語りが特徴。回想と現在を交互に描きながら、読者は主人公とともに謎を解き、人類存続の鍵を探していく。
「JAXAはずっと前からペトロヴァ・ラインを観測していて、太陽が暗くなるのとおなじ割合で明るくなっているっていうの。どうやってかわからないけれど、とにかくペトロヴァ・ラインは太陽からエネルギーを盗んでいるの」
Highlighted by 2 people
教師! ぼくは学校の教師だ! やっと思い出した! ああ、よかった。ぼくは教師だ。
Highlighted by 2 people
そんな高温の場所では水は存在できない。摂氏三〇〇〇度以上になると、水素と酸素の原子は結びついていられなくなってしまう。太陽表面の温度は摂氏五五〇〇度だ。
Highlighted by 2 people
上のほうに ヘイル・メアリー(アヴェ・マリアの意。また、アメフトで試合終盤、劣勢のチームが運を天にまかせて投げるロングパスの意)、下のほうに 地球。この宇宙船の船名と〝寄航地〟だ。まさかこの船が地球 以外の ところからきたと思っていたわけではないが、まあいい。とにかく乗っている船の名前はわかったようだ。
Highlighted by 2 people
「驚いたことに、光には運動量があるんです」とぼくはいった。「力を持っているんです。宇宙空間で懐中電灯をつけると、ごくごくわずかですが推力が得られるん
Highlighted by 2 people
これは帰るあてのない特攻ミッションだ。ジョン、ポール、ジョージ、リンゴは家に帰るが、ぼくの 長く曲がりくねった道 はここで終わる。ぼくはすべて承知のうえで志願したのだろう。しかしぼくの健忘症で穴ぼこだらけの脳にとっては初耳の話だ。ぼくはここで死ぬことになる。ここで、ひとりで死んでいくのだ。
Highlighted by 2 people
ヘリコプター・ペアレント(過干渉、過保護な親のこと) の軍団が子どもを迎えに舞い降りてくる時間帯だったからだ。万が一そのうちのひとりにでも見つかろうものなら、 かならず 文句をいわれたりなにやら提案されたりということになる。
Highlighted by 2 people · 1 left notes
水素と酸素はべつに魔法の物質じゃない! たしかに 地球の 生命体には水素と酸素が必要です。しかしほかの惑星にはまったくちがう状況があって当然です。あらゆる生命体に必要なのは、結果として元の触媒の複製ができるような化学反応なんです。それには水は必要ないんです!」
Highlighted by 2 people
光はおもしろい。波長で、なにと反応できるかできないかが決まる。波長より小さいものはその光子にとっては機能的には存在しないことになる。だから電子レンジの窓には網目があるのだ。網目の隙間は小さすぎてマイクロ波は通れない。だが可視光の波長はもっとずっと短いから自由に通り抜けることができる。だから、なかの食品が調理されるのをのぞきこんでいても、あなたの顔は溶けないのである。
Highlighted by 2 people · 1 left notes
飢餓にかんする計算はじつは非常に簡単です。全世界の農産業が一日に生み出す総カロリーを一五〇〇程度の数字で割る。総人口はそれを上回ることはできないのです。少なくともそう長いあいだは」
Highlighted by 2 people
13人の読者によるハイライト分析から、本書は科学的推論のスリルと異星人との交流を高い密度で描いた、ハードSFの傑作として強い支持を集めていることがわかる。
Glasp AI analysis based on highlights from 13 readers.
科学的な問題解決のプロセスそのものを楽しめる読者に最適だ。物理・化学・生物学の基礎知識があるとより深く味わえるが、必須ではない。『火星の人(オデッセイ)』を楽しんだ人、ハードSFやファーストコンタクトものが好きな人、ユーモアのある一人称の語りを好む人に強く勧められる。逆に、人間ドラマや叙情的な描写を主に求める読者には物足りなく感じられる可能性がある。理系の好奇心を持つすべての人へ。










Import your Kindle highlights to review, organize, and share the ideas that matter most to you.
Get the free browser extension