本書は、哲学を難解な学問史としてではなく、現実を読み解き、仕事と人生を生き抜くための「武器」として再編集した一冊です。中心にあるのは、哲学が突き詰めてきた問いが結局は二つに集約される、という整理です。すなわち、世界はどのように成り立っているのかという「Whatの問い」と、私たちはどのように生きるべきかという「Howの問い」です。
本書で特に強く読まれているのは、哲学の実用性を示す部分です。たとえば、イノベーションはアイデア不足ではなく「解くべき課題=アジェンダ」の欠如から停滞すること、そして課題設定力を支えるのが、常識を相対化するための教養だと説きます。重要なのは「常識を全部疑う」ことではなく、「疑うべき常識」と「見送ってよい常識」を見分けることです。
また、人間と組織の理解にも多くの紙幅が割かれます。
さらに、フロムやサルトル、アーレント、ミルなどを通じて、自由には孤独と責任が伴うこと、自分で考え批判を受け入れることが知性の条件であること、反対意見や摩擦こそが組織の意思決定を健全にすることが語られます。
全体として本書は、哲学史の網羅よりも、現代の仕事・組織・社会に効く50の概念を通じて、目の前の現実を疑い、より良い問いを立て、自分自身で生き方を選ぶ力を養おうとする本です。
「悪とは、システムを無批判に受け入れることである」と。 その上でさらに、アーレントは、「陳腐」という言葉を用いて、この「システムを無批判に受け入れるという悪」は、我々の誰もが犯すことになってもおかしくないのだ、という警鐘を鳴らしています。
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過去の哲学者が向き合ってきた問いは、「世界はどのように成り立っているのか」という「Whatの問い」と、「その中で私たちはどのように生きるべきなのか」という「Howの問い」の二つに整理することができます。古代ギリシア以来、ほとんどの哲学者が向き合った「問い」が全てこの二つに収れんするにもかかわらず、これほどまでに多くの哲学者の論考が存在するということは、つまりこれらの問いに対する「決定打」と言える回答が、未だに示されていない、ということの証左でもあるんですね。
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自分の努力に対して正確に相関する報酬を受け取れる。そういうわかりやすいシステムであれば、人間はよく働く。そう思っている人がすごく多い。雇用問題の本を読むとだいたいそう書いてある。でも僕は、それは違うと思う。労働と報酬が正確に数値的に相関したら、人間は働きませんよ。何の驚きも何の喜びもないですもん。 内田樹・中沢新一『日本の文脈』 03
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彼らは「イノベーションを起こそう」と思って仕事をしているのではなく、必ず具体的な「解決したい課題」があって仕事をしています。イノベーションの停滞が叫ばれて久しいですが、停滞の最大の原因となっているボトルネックは「アイデア」や「創造性」ではない、そもそも解きたい「課題=アジェンダ」がないということです。 そうなると「課題設定の能力」が重要だということになるわけですが、ではどうすれば「課題設定能力」を高めることができるのか? 鍵は「教養」ということになります。なぜかというと、目の前の慣れ親しんだ現実から「課題」を汲み取るためには、「常識を相対化する」ことが不可欠だからです。例えば、
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その人の判断がほんとうに信頼できる場合、その人はどうやってそのようになれたのだろうか。 それは、自分の意見や行動にたいする批判を、つねに虚心に受けとめてきたからである。どんな反対意見にも耳を傾け、正しいと思われる部分はできるだけ受け入れ、誤っている部分についてはどこが誤りなのかを自分でも考え、できればほかの人にも説明することを習慣としてきたからである。ひとつのテーマでも、それを完全に理解するためには、さまざまに異なる意見をすべて聞き、ものの見え方をあらゆる観点から調べつくすという方法しかないと感じてきたからである。じっさい、これ以外の方法で英知を獲得した賢人はいないし、知性の性質からいっても、人間はこれ以外の方法では賢くなれない。 ミル『自由論』 集団における
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人の行動を本当の意味で変えさせようと思うのであれば、「説得よりは納得、納得よりは共感」が求められます。論理思考に優れたコンサルタントが往々にして事業会社に移ってから苦戦するのは、論理によって人が動くと誤解しているからです。
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自由であることには耐え難い孤独と痛烈な責任を伴う。これらに耐えつつなお、真の人間性の発露と言えるような自由を希求し続けることによって初めて人類にとって望ましい社会は生まれるはずですが、しかし、自由がその代償として必然的に生みだす、刺すような孤独と責任の重さに多くの人々は疲れ果て、高価な代償を払って手に入れた「自由」を投げ捨ててナチズムの全体主義に傾斜することを選んだ。フロムの分析をまとめればこのようになります。
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人が創造性を発揮してリスクを冒すためには「アメ」も「ムチ」も有効ではなく、そのような挑戦が許される風土が必要だということであり、更にそのような風土の中で人が敢えてリスクを冒すのは「アメ」が欲しいからではなく、「ムチ」が怖いからでもなく、ただ単に「自分がそうしたいから」ということです。 15
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哲学を学ぶことの最大の効用は、「いま、目の前で何が起きているのか」を深く洞察するためのヒントを数多く手に入れることができるということです。そして、この「いま、目の前で何が起きているのか」という問いは、言うまでもなく、多くの経営者や社会運動家が向き合わなければならない、最重要の問いでもあります。つまり、哲学者の残したキーコンセプトを学ぶことで、この「いま、何が起きているのか」という問いに対して答えを出すための、大きな洞察を得ることができる、ということです。これ
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私たちは「意思が行動を決める」と感じますが、実際の因果関係は逆だ、ということを認知的不協和理論は示唆します。外部環境の影響によって行動が引き起こされ、その後に、発現した行動に合致するように意思は、いわば遡求して形成されます。つまり、人間は「合理的な生き物」なのではなく、後から「合理化する生き物」なのだ、というのがフェスティンガーの答えです。 認知的不協和理論について、フェスティンガーが
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Glasp上の45件の読者ハイライト分析では、課題設定・批判的思考・組織論への応用に強い共感が集まっています。特に、報酬と動機づけ、アーレントの「悪」、ミルの反対意見の重視など、実務に持ち帰れる箇所が繰り返し支持されています。
Glasp AI analysis based on highlights from 45 readers.
新規事業担当、マネジャー、経営者、組織開発や人材育成に関わる人に特に向いています。加えて、常識を疑いたいが何を疑えばよいかわからない人、評価制度や組織運営に違和感がある人、自由や自己決定の重さに向き合いたい人にも有益です。
哲学の予備知識はほぼ不要です。むしろ、哲学史の暗記ではなく、仕事・社会・人間理解に直結する観点を求める初学者ほど読みやすいタイプの本です。










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