ウォルター・アイザックソンによる公式伝記の前半部にあたる本書は、スティーブ・ジョブズの誕生から、アップル創業、マッキントッシュ開発、アップル追放、そしてネクストやピクサーへと続く前半生を描く。
本書を貫くテーマは、ジョブズの言葉を借りれば「文系と理系の交差点」に立つ創造性である。人文科学と自然科学、芸術とテクノロジーを融合させる強烈な個性こそが、彼の革新の源泉だったとアイザックソンは論じる。
物語は、養子に出された出生の事実から始まる。「捨てられた/選ばれた/特別」という観念がジョブズの自己認識と〈現実歪曲フィールド〉の根を形作る。父ポールから学んだ「見えない裏側まで美しく仕上げる」職人精神、リード大学でのカリグラフィー、LSD体験、インド放浪と禅への傾倒が、彼の美意識と直感重視の哲学を育てる。
ウォズニアックとの相補的な協業——「お人よしの魔法使い」ウォズの発明を、ジョブズが製品化しマーケティングする——がアップル誕生を導く。マークラの〈共感・フォーカス・印象〉というマーケティング哲学、ゼロックスPARCからの「偉大な芸術家は盗む」発想、角丸長方形へのこだわり、起動時間短縮の説得など、製品への執着が詳細に語られる。
本書は次の対立軸を通してジョブズ像を立体化する。
最終的に、ビル・ゲイツとのGUI論争や追放を経て、第2幕の「きらめくような失敗」こそが後の成功を準備したと位置づけられる。
「マイクには本当に世話になった。彼の価値観は僕とよく似ていたよ。その彼が強調していたのは、金儲けを目的に会社を興してはならないという点だ。真に目標とすべきは、自分が信じるなにかを生み出すこと、長続きする会社を作ることだというんだ」
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次に作ったのは、アップルⅡ用のパスカル(いわゆる高級プログラミング言語のひとつ) である。アップルⅡに必要なのはBASICだけだと考えていたジョブズから反対されたが、最後は「そんなに言うなら6日やる。僕が間違っていると証明してみせろ」との譲歩を引き出し、証明に成功する。これをきっかけにジョブズはアトキンソンに一目置くようになった。
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そのビジョナリーとして有名な人物にアラン・ケイという研究員がいた。 「未来を予測する最良の方法は、自分で作り上げることだ」 「ソフトウェアを真剣に追求するのなら、ハードウェアまで作るべきだ」 という、ジョブズお気に入りの言葉を述べた人物だ。
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「つまり、人類がなし遂げてきた最高のものに触れ、それを自分の課題に取り込むということです。ピカソも、『優れた芸術家はまねる、偉大な芸術家は盗む』と言っています。我々は、偉大なアイデアをどん欲に盗んできました」
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T・S・エリオットが指摘しているように、着想と創造のあいだには闇がある。新しいアイデアだけでイノベーションが生まれるわけではない。そのアイデアを現実とする行為も等しく重要なのだ。
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ある日、ビル・アトキンソンがテキサコタワーにわっと駆け込んできた。円や 楕円 をすばやく描けるアルゴリズムを思いついたのだ。円を描く場合、ふつうは平方根の計算が必要となるが、この計算を68000マイクロプロセッサーはサポートしていなかった。それをアトキンソンは、一連の奇数を足し合わせると完全平方数になること(1+3=4、1+3+5=9など) を利用して処理したらいいと気づいたの
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ゲイツはたび重なるクパチーノ訪問を楽しんだ。ゲイツの目の前で、ジョブズは、奇矯なふるまいで社員を振りまわしたり強いこだわりを示したりした。 「スティーブは例によって究極のハーメルンの笛吹きモードで、マックが世界を変えるんだと言い切り、すさまじい緊張感と複雑な人間関係で、正気とは思えないほど皆を働かせていました」
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ジョブズは、マイクロソフトとの契約に書かれたとある条項にもとづき、バンドルをやめることにした。マイクロソフトは、消費者に直接、製品を販売しなければならなくなったわけだ。 このときゲイツはとくに抗議しなかった。ジョブズは拙速が多いとわかっていたし、バンドルしないほうがマイクロソフトにとっては有利かもしれないと思ってもいたからだ。 「ソフトウェアを別個に販売したほうが儲かるだろうと思いました。ある程度の市場シェアが取れると思うなら、そのほうがいいわけです」
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契約時、ジョブズは、1983年1月のマッキントッシュ発売から1年間、アップル以外にはグラフィカルソフトウェアを出荷しないという条件をゲイツに呑ませていた。失敗は、マッキントッシュの発売が1年遅れるという可能性を契約に織り込まなかったこと。だからゲイツは、1983年 11 月、ウィンドウやアイコンを持ち、マウスが使えるGUIのオペレーティングシステム、「ウィンドウズ」をIBM PC用に開発すると大手をふって発表できたのだ。
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「おまえがしているのは盗みだ! 信頼したというのに、それをいいことにちょろまかすのか!」 ゲイツはじっと座り、スティーブの目を冷静に見かえしていた。そして、ちょっと甲高い声で伝説となる一言を投げ返す。 「なんと言うか、スティーブ、この件にはいろいろな見方があると思います。我々の近所にゼロックスというお金持ちが住んでいて、そこのテレビを盗もうと私が忍び込んだらあなたが盗んだあとだった──むしろそういう話なのではないでしょうか」
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5人の読者による多数のハイライトは、ジョブズの人物形成と哲学を物語る象徴的な逸話に集中しており、伝記としての描写の濃密さと引用の豊かさが高く評価されていることを示している。
Glasp AI analysis based on highlights from 5 readers.
アップルやシリコンバレーの歴史に関心がある人、起業家やプロダクト開発に携わる人、デザインとテクノロジーの融合に興味がある人に最適。ジョブズの輝かしい成功だけでなく、養子という出自や人間関係の影、〈現実歪曲フィールド〉といった負の側面まで含めて理解したい読者に向く。経営者やクリエイター、リーダーシップを学ぶ人、伝記文学として人物の内面を深く知りたい人にも示唆が多い。専門知識は不要。
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