SEOとコンテンツ戦略が着実な成長をもたらしてくれた一方で、私たちはユーザー獲得を一気に加速させるブレイクスルーの瞬間も何度か経験しました。これらの瞬間は偶然の産物ではありません。新興トレンドとユーザーの本当のニーズが交わる地点に、意図的に自分たちを置き続けた結果です。そしてその多くは、ひとつの源から生まれました。2022年にインターネットを塗り替え始めたAIの波です。
この章では、私たちがどうやってその波に乗ったのか、そしてGlaspの存在意義を見失わずに乗りこなそうとした試みについてお話しします。
Aurelius効果:たったひとつの正しいパートナーシップ
AIが登場する前、最初の大きな成長加速をもたらしたのは、期待をはるかに超えるリターンを生んだ戦略的なYouTubeスポンサーシップでした。
2021年8月までに、私たちはターゲットオーディエンスについて十分な裏付けを集め、YouTubeスポンサーシップを検討できる段階に達していました。少ない予算を多くのクリエイターに薄く分散させるのではなく、リソースをひとつのパートナーシップに集中させることにしました。
数十人の候補をリサーチした末に見つけたのが、Aureliusでした。登録者数約30万人のオーストラリア人YouTuberで、その視聴者層は私たちのターゲットユーザー、つまり生産性と学習に関心を持つ思慮深いナレッジワーカーと完璧に一致していました。
スポンサーシップ自体はシンプルなもので、彼の動画の中でGlaspに短く触れてもらうだけでした。予想していなかったのは、そこから連鎖反応が起きたことです。
- Aureliusが動画でGlaspを紹介し、最初の登録者の波が押し寄せた
- Aureliusの動画を見た他のクリエイターたちがGlaspを発見し、言及し始めた
- そのクリエイターたちが、Glaspについて独自の動画、投稿、記事を作った
- 彼らの視聴者がGlaspを発見し、その中でも影響力のある人たちがさらに多くのコンテンツを生み出した
この「インフルエンサーの連鎖」は、当初の投資をはるかに超える乗数効果を生みました。クリエイターエコノミーでは、適切な一人に届くことが、その人のクリエイター仲間のネットワーク全体に間接的に届くことを意味します。リソースが限られているときは、パートナーシップの広さよりも深さが勝つのです。
DALLE-dle:AIの最前線での初期実験
2022年半ば、私たちは来たるAI革命の初期シグナルに気づき始めていました。DALL-Eがリリースされたばかりで、目を見張るような画像生成を見せていました。同じ頃、Wordleがシンプルで中毒性のある単語ゲームとして世界的なブームになっていました。
これらのトレンドをただ眺めるのではなく、私たちは自分たちに問いかけました。これらをGlaspのコア機能と組み合わせて、何かユニークなものを作れないだろうか、と。
その答えが「DALL-E Wordle」、略して「DALLE-dle」でした。AIが生成した画像の元になった有名な引用句を当てるゲームです。引用句にはGlasp上に集まったハイライトを使い、コアプロダクトとの自然なつながりを持たせました。
この実験はWordleフォーマットの面白い新解釈として、大手ゲームメディアのPC Gamerに取り上げられ、Glaspに大きなトラフィックをもたらしました。DALLE-dleはコアプロダクトではありませんでしたが、認知を広げ、世間の関心が高まり始めたまさにそのタイミングで、私たちをAI領域のビルダーとして印象づけてくれたのです。
ChatGPT Chrome拡張機能:数週間ではなく数日で
2022年11月にChatGPTが登場したとき、私たちはすぐにその可能性を確信しました。競合として見るのではなく、これを使って何が作れるかを考えたのです。
ChatGPTのリリースから数日のうちに、私たちはChatGPT向けとしては最初期のChrome拡張機能のひとつを作り、ユーザーがどのウェブページからでもAIアシスタントにアクセスできるようにしました。このシンプルなツールは、初期のChatGPTユーザーが感じていた実際の不便を解消するものでした。
タイミングが決定的に重要でした。リリース後の最初の数週間で、私たちの拡張機能はChatGPT関連のChrome拡張機能の中で最もインストールされたもののひとつとなり、瞬く間に30万インストールに到達して、巨大な新規オーディエンスを私たちのエコシステムに呼び込みました。
これは運ではありません。技術トレンドを常に監視し、チャンスが現れた瞬間に素早く動ける準備をしていた結果です。ChatGPT周辺で役立つツールをいち早く作った者として、私たちは大きな注目を集めることができました。ほんの数週間後、市場が飽和してからでは、同じ注目を得るのははるかに難しかったでしょう。
YouTube Summary with ChatGPT:本体を超えて成長したツール
私たちの最大のバイラルヒットは、すでに持っていた2つのものを組み合わせたところから生まれました。ChatGPT以前から提供していたYouTubeハイライト機能と、新たに得たAI統合の経験です。
YouTubeには膨大な価値ある知識が詰まっていますが、それを取り出して自分のものにするのは大変です。そこで私たちはYouTube Summary with ChatGPTを作りました。次のことができるChrome拡張機能です。
- あらゆるYouTube動画から文字起こしを自動で抽出する
- その文字起こしをAIモデルに通して、簡潔な要約を生成する
- 動画の横に要約を表示して、すぐに参照できるようにする
- 要約と自分のハイライトの両方をGlaspに保存できるようにする
これは明確なペインポイントに応えるものでした。長尺動画から知識を取り出すのにかかる時間です。30分の動画を視聴する代わりに、ユーザーは30秒で要約を読み、その上で動画全体に時間を割く価値があるかを判断できるようになりました。
反響は即座に、そして圧倒的にやってきました。ユーザーがSNSでスクリーンショットをシェアし、お金では到底買えない規模のオーガニックな宣伝が生まれました。YouTubeクリエイターたちは、このツールでリサーチがどう変わったかを動画で紹介してくれました。ニュースレターの書き手たちは、必須AIツール特集に取り上げてくれました。ForbesのようなビジネスメディアもAIの革新的な活用例として報じてくれました。
1年もしないうちに、YouTube Summary with ChatGPTをインストールしたユーザーは200万人を超えました。当時のGlasp本体のユーザーベースの2倍以上です。拡張機能が、プロダクト本体よりも人気になってしまったのです。
私たちはそれを問題と捉えるのではなく、チャンスとして扱いました。YouTube Summaryはスタンドアロンのツールではなく、ユーザーのGlaspアカウントに直接つながっていて、ハイライト、ノート、知識共有への入り口になっていました。AI要約を目当てに来たユーザーの多くが、それ以外の機能のために残ってくれました。カジュアルなAIツールユーザーから熱心なGlaspユーザーへの、自然なアップグレード経路になったのです。
Digital Clones:あなたのハイライトが語りかけてくる
その勢いに乗って、私たちはDigital Clonesを開発しました。ユーザーのGlasp上のハイライトとノートで学習した、パーソナライズドAIアシスタントです。
コンセプトには強い魅力がありました。Glaspで記事、本、動画をハイライトしていくと、あなたの興味、知識、思考パターンを映し出すデータセットが自然と出来上がっていきます。その個人のデータセットでAIを学習させれば、あなたの思考のデジタルな延長、つまりあなたの視点を反映してトピックを語れる「クローン」が手に入るのです。
Digital Clonesは、いくつもの課題を同時に解決しました。
- ユーザーが自分の集めた知識を探索し、対話できる手段を提供した
- ハイライトとコンテンツ保存を続ける強い動機を生み出した
- 私たちのミッションを文字どおり実現した:個人を超えて他者と関わり続ける知識、という形で
YouTube Summary with ChatGPTほどの即効性のあるバイラルにはなりませんでしたが、テクノロジーメディアや未来学者たちの注目を集め、パーソナルナレッジマネジメントの行き先を垣間見せるものとして評価されました。そして強力なエンゲージメントループも生まれました。ハイライトすればするほど、自分のクローンが役立つものになっていくのです。
脇を固めた実験たち
これらの主力機能の周辺で、私たちは小さなAI実験や仕組みを次々と公開しました。
- Idea Hatchは言語モデルを使って、ユーザーのコレクションの中の一見無関係なコンテンツ同士の意味あるつながりを見つけ出し、受け身のアーカイブを能動的な思考のパートナーに変えました。
- コンテンツ自動化のおかげで、2人だけのチームがはるかに大きな組織のように動けました。1本のYouTube動画から、構造化されたブログ記事、SNS向けの短文、ニュースレターのコンテンツが生まれ、人間はゼロから書くのではなく、レビューと仕上げに集中できました。
- Kindle性格診断は、ユーザーのKindleハイライトを分析して、読書パターンに関する遊び心のある診断結果を生成し、本をおすすめするものでした。開発コストは低く、結果は自然とシェアされやすく、読書とハイライトという本業への明確なつながりもありました。
どれもコアプロダクトではありません。しかしどれもが、注目と信頼と新規登録を複利で積み上げてくれました。
これらの成功に共通していたもの
Aureliusの連鎖、DALLE-dle、ChatGPT拡張機能、YouTube Summary with ChatGPT、そしてDigital Clonesを振り返ると、同じ原則が繰り返し現れていることがわかります。
1. 不完全でもいいから、最初に出す
私たちのChatGPT拡張機能もYouTube Summary with ChatGPTも、後から登場したものと比べれば機能が最も充実していたわけではありません。しかし、関心がピークに達したときに使える最初期の選択肢ではありました。新しいトレンドの窓は、週単位ではなく日単位で閉じていきます。私たちは最低限の品質ラインは守りつつ、磨き込みよりスピードを優先し、注目を集めてから改善を重ねました。
2. コアバリューに結びついた、本当の課題を解決する
YouTube Summaryが成功したのは、AIを見せびらかしたからではなく、本物のペイン(何時間もの動画と、限られた時間)を解消したからです。そして私たちが公開したすべての機能は、知識の収集と共有という本業に立ち返るものでした。トレンド追いかけ自体が目的になればトラフィックしか生まれません。ミッションに資するトレンドの追いかけ方をすれば、ユーザーが生まれるのです。
3. プロダクトの中に拡散の仕組みを組み込む
最も大きくバイラルに広がった機能には、シェアの仕組みが組み込まれていました。YouTube Summaryのさりげないブランディングは、ユーザーが投稿するすべてのスクリーンショットに写り込みました。Digital Clonesは、自分専用のAIを誰かに見せたいという気持ちを生みました。プロダクト自身がマーケティングをしてくれたのです。
4. 初期シグナルを観察し続ける
これらのチャンスは、どれも前触れなく現れたわけではありません。DALLE-dleの前にはAI画像生成への関心の高まりに、拡張機能の前にはChatGPTをめぐる初期の熱狂に、私たちは気づいていました。注意を払い続けること、それ自体が戦略なのです。
5. コアを強化する。決して置き換えない
AI機能はハイライトの価値を高めるものであって、ハイライトの代わりになるものではありませんでした。Digital Clonesはハイライトすればするほど良くなり、Idea Hatchは保存すればするほど良くなりました。それぞれの機能が、コアプロダクトから注意を逸らすのではなく、コアプロダクトへのエンゲージメントを深めてくれたのです。
バランスの取り方:トレンドと長期ビジョンのあいだで
これらのバイラルの瞬間は成長を劇的に加速させましたが、リスクも伴いました。知識共有というミッションではなく、流行りの機能で知られる存在になってしまう危険です。
私たちはその緊張関係を、どんなに話題性があっても新機能は必ず長期ビジョンに資するものでなければならない、という原則を貫くことで乗り越えました。YouTube Summary with ChatGPTはAIの小手先芸ではありません。動画から知識を取り出すという、まさにGlaspの存在理由そのものを実現するツールでした。短期的な成長が見込めても、ビジョンに合わないバイラルのチャンスは数多く見送りました。
結局のところ、これらの瞬間は持続的な成長戦略とは別物ではありませんでした。その上に重ねたアクセラレーターだったのです。新しいテクノロジーを変わらないミッションに結びつけたことで、一時的な注目で終わるはずのスパイクは、持続的なエンゲージメントへと定着していきました。