直接の声かけと一人ひとりへのオンボーディングによって最初の1,000人のユーザーを獲得した後、私たちは重要な問いに直面しました。顧客獲得コスト(CAC)をゼロ、あるいはほぼゼロに保ったまま、個人的なネットワークの外へどう成長していけばいいのか、という問いです。
答えは、長期的なビジョンに沿った、スケール可能な成長チャネルを見つけることにありました。継続的な再投資を必要とするのではなく、時間とともに複利で効いていく手法が必要だったのです。
SEO:長期戦を選ぶ
持続的な成長のために、私たちが最も力を入れたのが検索エンジン最適化(SEO)でした。出稿をやめた瞬間にユーザー獲得が止まる有料広告とは違い、SEOへの投資は何年にもわたって成果を生み続けます。
私たちはSEOに3つの戦略で取り組みました。
1. 戦略的なコンテンツ制作
プロダクトの機能に関連する、検索意図の強いキーワードを特定し、それらを深く掘り下げたコンテンツを作りました。「Kindleからハイライトをエクスポートする方法」「研究者向けChrome拡張機能まとめ」「YouTube動画でノートを取る方法」といった記事は、Glaspが解決できる具体的な課題を狙ったものです。
これらは検索アルゴリズムを攻略するための薄っぺらいブログ記事ではありません。プロダクトの機能を紹介しつつ、それ自体で価値が完結する、本当に役立つガイドを作りました。読者はGlaspに登録しなくても、記事のアドバイスを実践できたのです。
このアプローチのおかげで、私たちのコンテンツは関連キーワードで上位に表示されることが多くなりました。さらに重要なのは、これらの検索経由でたどり着いたユーザーは、Glaspがすぐに解決できる具体的な課題を抱えていたため、アクティベーション率も継続率も高かったことです。
2. 戦略的な被リンク獲得
特定の被リンクが、他とは比べものにならないほどのSEO価値を持つことに、私たちは早くから気づいていました。特に政府機関(.gov)や教育機関(.edu)のドメインからのリンクは、検索順位を大きく押し上げる可能性があります。
自動化されたアウトリーチやリンク交換に頼るのではなく、私たちはより丁寧なアプローチを取りました。
- 私の母校に連絡し、卒業生向けリソースにGlaspを掲載してもらいました
- 日本の文部科学省に連絡し、教育ツールのディレクトリにGlaspを加えてもらいました
- 教育系ブログや研究プラットフォームとの関係を築きました
こうした権威性の高い被リンクは、検索順位を上げただけではありません。真剣な読書家や研究者がGlaspを見つけてくれる場所に、Glaspを置くことにもつながりました。
3. ユーザーインタビューのケーススタディ
私たちはユーザーインタビューを詳細なケーススタディに仕立て、一石二鳥の効果を狙いました。見込みユーザーへの社会的証明になると同時に、価値あるSEOコンテンツにもなったのです。
ケーススタディでは、多様なユースケースを取り上げました。
- Glaspでプロダクトマネージャーをフォローし、彼らのおすすめ記事を読み続けて、最終的にPM職を勝ち取った求職者
- 投資候補のリサーチにGlaspを共同で活用するベンチャーキャピタルのチーム
- 記事を執筆する前のリサーチ収集にGlaspを使うライターたち
それぞれのケーススタディは特定のキーワードを狙いつつ、プロダクトの実際の活用例を示すものでした。似たような課題の解決方法を探している見込みユーザーがこれらのストーリーを見つけ、Glaspを解決策として認識してくれるようになったのです。
このSEO中心のアプローチの素晴らしさは、その複利性にありました。作ったコンテンツの一つひとつが、月を追うごとに、年を追うごとに、私たちのために働き続けてくれます。成果が完全に現れるまでには6〜12か月かかることも多く、即効性はありませんでしたが、効果は長続きし、互いに積み重なっていきました。
Medium:既存の流通網を活用する
自社ブログに加えて、新しい読者層にリーチするための戦略的チャネルとしてMediumを活用しました。Mediumのレコメンドアルゴリズムは、Glaspをまだ知らない読者にコンテンツを届ける手段になってくれたのです。
私たちは、深く掘り下げたチュートリアル、ナレッジマネジメントに関する考察、効果的な学習法のガイドなどを公開しました。各記事には、過度に宣伝的にならないよう、関連する箇所でGlaspへの自然な言及を含めました。
鍵となったのは、エンゲージメントを評価するMediumのアルゴリズムを理解することでした。読者がハイライトし、コメントし、シェアしたくなるような、本当に価値のあるコンテンツを作ることに集中しました。こうした行動こそが、Mediumのエコシステム内で記事の露出を高めてくれるからです。
この戦略は好循環を生みました。ユーザーがMediumで私たちの記事を見つけ、読んだ後に多くの人がGlaspに登録し、そのGlaspを使って他のMedium記事をハイライトして保存する。プラットフォーム内で、私たちのツールの存在が社会的証明として目に見える形で広がっていったのです。
ゲスト投稿:既存メディアの信頼を借りる
自社のSEO基盤を築きながら、並行して既存プラットフォームへのゲスト投稿の機会も追求しました。これにより、確立されたメディアが持つ信頼と読者層を借りることができました。
私たちが特に狙ったのは、テクノロジー系ブログ、生産性関連のウェブサイト、ナレッジマネジメントのコミュニティです。あからさまに宣伝的なコンテンツを売り込むのではなく、次のような記事を通じて本物の価値を提供しました。
- テクノロジーレビューサイト向けの「Top 10 Chrome Extensions in 2022」(Glaspを自然な形で含める)
- 生産性ブログ向けの「How the World's Top Thinkers Organize Their Knowledge」
- 先進的なメディア向けの「The Future of Social Reading」
これらのゲスト投稿は、複数の目的を同時に果たしてくれました。
- 確立された読者層にGlaspを紹介する
- 自社サイトへの権威ある被リンクを構築する
- この分野のソートリーダーとしての地位を確立する
- 複数チャネルで再利用できるコンテンツを生み出す
ゲスト投稿を成功させる鍵は、量ではなく戦略的な掲載先選びでした。適切なプラットフォームに載った1本の記事は、関連性の低いサイトに載った何十本もの記事よりも、質の高いユーザーを連れてきてくれたのです。
Product Hunt:機能ごとに何度もローンチする
ほとんどのプロダクトは、Product Huntに一度ローンチしたらそれで終わりにしてしまいます。私たちは違うアプローチを取り、個々の機能を独立したプロダクトとしてローンチしました。
9月の最初のProduct Huntローンチ(トラフィックはささやかなものでした)の後、主要な機能をリリースするたびにこのプラットフォームに戻ってこられることに気づいたのです。
- PDFハイライト機能
- YouTubeの文字起こしとハイライト
- AIによる要約生成
- iOSアプリとAndroidアプリ
- 音声文字起こしツール
これらのローンチはそのたびに、新たな注目、被リンク、そしてユーザーを連れてきてくれました。さらに重要なのは、Glaspが絶えず進化し改善し続けているというメッセージを、コミュニティに発信できたことです。
この「機能をプロダクトとして」ローンチする戦略は、いくつもの目標を同時に達成しました。
- トラフィックの多いプラットフォームでの定期的な露出
- 継続的な被リンクの獲得
- イノベーションと開発スピードに対する評判の確立
- 過去のユーザーが再び戻ってくる自然なきっかけづくり
私たちが学んだのは、Product Huntは単なるローンチの場ではないということです。正しいアプローチさえあれば、繰り返し活用できる継続的な成長チャネルだったのです。
複利の効果:なぜこれらのチャネルを優先したのか
振り返ってみると、これらすべてのチャネルに共通していたのは、その複利性でした。予測可能だが一時的な結果しか生まない有料広告とは異なり、こうしたオーガニックなアプローチは、最初は小さくても時間とともに育っていきます。
SEOに取り組み始めて6か月では、上位表示されるキーワードはほんの一握りかもしれません。12か月経つと、それが数十に増えているかもしれません。2年経てば、何百もの関連キーワードで上位表示され、その一つひとつが質の高いユーザーを安定的に連れてきてくれるのです。
同じ複利的な成長は、コンテンツ、被リンク、コミュニティでの存在感にも当てはまりました。私たちが作った資産は一つひとつ、半永久的に働き続けてくれます。必要なのは作り直しではなく、メンテナンスだけでした。
このアプローチは、私たちのリソース制約と完璧に噛み合っていました。外部資金のない小さなチームには、継続的な再投資を必要とする戦略を選ぶ余裕はありません。時間とともに価値が上がっていく資産を築く必要があったのです。
結果がすべてを物語っています。最初の1年が終わる頃には、獲得コストを一切かけずに数万人のユーザーを獲得し、やがて数百万人を支えることになる基盤を築いていました。
しかも、こうしてやってきたユーザーは、最初から私たちのミッションに共感していました。彼らは学習、ナレッジマネジメント、テクノロジーとの思慮深い付き合い方に関するコンテンツを通じてGlaspを見つけてくれた人たちです。無料トライアルや特典目当ての「賞金稼ぎ」ではなく、開かれた知識共有という私たちのビジョンに心から共鳴してくれる人々だったのです。