最初の100人:友人、家族、そして信じる気持ち
すべてのスタートアップは、ある重要な問いから始まります。「これは誰が使うのか?」。Glaspの初期、その答えはシンプルでした。私たち自身です。私たちはまず自分たちのために、オンラインで読んだコンテンツを保存して整理するツールとしてGlaspを作りました。
しかし、プロダクト開発はコードだけの話ではありません。人の話です。2020年の8月と9月、おそるおそる最初のメッセージを送ったことを今でも覚えています。「役に立ちそうなものを作ったんだ。試してみてもらえないかな?」
最初のユーザーは見ず知らずの人ではありませんでした。友人、元同僚、身近なネットワークの人たちです。私たちはこれを「founder-friend」型の広め方と呼んでいました。知り合いに直接連絡して、プロダクトを試してもらうやり方です。
初期の成長は気が遠くなるほど遅いものでした。ダイレクトメッセージと個人的なつながりを頼りに、一人また一人と、最初の100人のユーザーまで積み上げていきました。ただ、彼らはただのユーザーではありませんでした。私たちとビデオ通話をして、画面を共有し、何が良くて何がダメかを遠慮なく伝えてくれる人たちだったのです。
1対1のオンボーディング:800回の通話マラソン
振り返ってみると、その数字には自分たちでも驚きます。ユーザーが1,000人に達するまでに、私たちは750回以上のオンボーディング通話を自ら行っていました。1回の通話は15〜20分で、共同創業者のKeiと私が朝と夜に分担してこなしました。
これらはセールストークではありませんでした。どの通話も、まず私たちの物語から始めました。なぜGlaspを作ったのか、オープンな知識プラットフォームというビジョン、そして世の中にどんな変化を起こしたいのか。個人的な経験も話しました。私が死にかけた経験と、それが「知識を個人を超えて生かす」というミッションをどう形づくったかに触れることもありました。
最も価値があったのはその次の部分です。ユーザーに画面を共有してもらい、普段オンラインの情報をどのように保存しているかを見せてもらいました。Notionのページ、ブラウザのブックマーク、メモアプリを行き来する様子を観察しました。サインアップの流れのどこでためらうのか、どこで戸惑うのか、何にワクワクするのかを見ていったのです。
「そこをクリックしてもらえますか?」と、Zoomの注釈機能で案内しながら尋ねました。「そのボタンを押したとき、何が起きると思っていましたか?」
これらの通話は消耗しましたが、何ものにも代えがたいものでした。得られたのは次の4つです。
- インターフェースや機能に対するリアルタイムのユーザーフィードバック
- プロダクトに触れる前のユーザーのワークフローへの理解
- チームと個人的なつながりを持ったユーザーからの感情的な思い入れ
- ユーザータイプごとのパターンが見えてくることによるターゲット層の明確化
プラットフォームでアクティブにならなかったユーザーも、私たちの物語は覚えていてくれました。数か月後、あるいは数年後に「あなたたちが作っているもの、覚えていますよ。同僚がまさにこれを必要としているんです!」と連絡をくれる人もいました。頼んでもいないのに定期的にレポートを送ってくれたSEOコンサルタントのように、非公式のアドバイザーになってくれた人もいます。
教訓は明確でした。最初期においては、リーチの広さよりもつながりの深さのほうが重要です。これらの通話が生み出したのは、プロダクトをただ試しただけでなく、それが存在する理由を理解してくれるユーザーという土台でした。
ターゲット層を見つける
Glaspを作るうえで最も難しかったことの一つが、「これは一体誰のためのものか」を見極めることでした。当初、保存される記事の多くがプロダクトマネジメント関連だったことから、プロダクトマネージャーがターゲットになるのではないかと仮説を立てました。
これが最初の本格的なアウトリーチにつながりました。LinkedInやSlack上のプロダクトマネジメント系コミュニティに参加しました。なかには15万人規模のものもありました。アクティブなメンバーを丁寧に見つけ出し、Glaspを使えばプロダクトマネジメント記事のリーディングリストを作れることを、一人ひとりに合わせたメッセージで伝えました。
反応は手応えのあるものでしたが、同時に重要な気づきも得られました。プロダクトマネージャーは登録して記事をブックマークしてくれるものの、期待していたほどハイライトやメモを取ってくれなかったのです。さらに重要なことに、自分のコレクションを他人と共有することはほとんどありませんでした。
これが最初のピボットにつながりました。Glaspを口コミで広げたいなら、コンテンツを消費するだけでなく、それを共有する動機を持つユーザーが必要です。そこで有望な層として浮かび上がったのがライター、特にコンテンツライターとSEOスペシャリストでした。
「ライターはリサーチをして、情報源をまとめ、そこからコンテンツを作る。Glaspがその橋渡しになれたらどうだろう?」と私たちは考えました。
アウトリーチの対象をライティング系コミュニティに切り替えると、ほどなくして、編集者とのワークフローの中でGlaspを使うユーザーが現れました。記事をリサーチし、重要な箇所をハイライトし、レビューの場で自分のGlaspプロフィールを編集者に共有する、という使い方です。
これは初期の重要な教訓でした。「誰がこのプロダクトを使うか」という最初の仮説は、たいてい間違っています。プロダクトから最も価値を得るユーザーは、自分が考えてもみなかった隣接領域にいるかもしれません。何百件もの個別の対話を重ねていたからこそ、こうしたパターンに気づき、素早く軌道修正できたのです。
ターゲット層のピボットは、どれも失敗ではありませんでした。理解を磨き上げる過程だったのです。一つひとつの対話が、Glaspをただ使うだけでなく、周りに薦めてくれる人たちへと私たちを近づけてくれました。
画面共有の力:見ることで学ぶ
オンボーディング通話で最も価値があったのは、ユーザーが「語ったこと」ではありません。「見せてくれたこと」でした。画面を共有してもらうことで、どんなアンケートや分析ダッシュボードからも得られない気づきを手にできたのです。
人々がデジタル生活の中で実際にどう情報を整理しているかが見えてきました。Notionのデータベースを几帳面に整理している人もいれば、何年分も積み重なったブラウザのブックマークを抱えている人もいました。スクリーンショットを撮ったり、テキストをメモにコピペしたりと、間に合わせの方法で大事な一節を保存している人も大勢いました。
この直接観察によって、ユーザー自身も言葉にできないペインポイントが浮かび上がりました。「記事をもっとうまく保存したい」と言う人は、その記事が半年後にも簡単に検索できる必要があることや、他の読者のハイライトが見られたら助かることまでは口にしないかもしれないのです。
画面共有は、ユーザビリティの問題もその場であらわにしてくれました。新規ユーザーがボタンの前でためらったり、機能を誤解したり、見当違いの場所で機能を探したりする様子を、私たちはつぶさに見ていました。アクティベーション指標が改善しない理由を頭で悩むのではなく、つまずきのポイントを文字どおり目で確かめられたのです。
「上のメニューでハイライトボタンを探していらっしゃいますね」と私たちは声をかけました。「実は右クリックメニューに入れているんです。あなたのワークフローに合っていますか?」
こうした観察は、そのままプロダクト改善につながりました。オンボーディングの流れをより直感的にし、わかりにくい用語を整理し、ユーザーが自力で編み出していた回避策をもとに機能の優先順位を決めました。
ユーザーの話を聞くだけではいけません。見るのです。人が「やっている」と言うことと実際にやっていることのあいだのギャップにこそ、最も価値あるプロダクトの気づきが隠れていることが多いのです。
コストを意識した成長:有料チャネルを避けた理由
Glaspの初期に、私たちは成長戦略全体を方向づける意図的な選択をしました。顧客獲得コストがほぼゼロのチャネルだけに集中する、という選択です。
これは単なる倹約ではありません。明確なマネタイズ戦略を持たないコンシューマー向けプロダクトとして、お金を払ってユーザーを獲得するやり方は持続不可能だとわかっていました。顧客獲得コスト(CAC)を回収できなければ、成長はいずれ壁にぶつかります。
「ユーザーからすぐにお金をいただかないのなら、ユーザー獲得にお金を使うわけにはいかない」と私たちは考えました。この制約が、創造性を生む強みになったのです。
このCACゼロのアプローチに合うチャネルとして、主に2つを定めました。
- SEO: 継続的なコストをかけずに、何年もトラフィックを生み続けるコンテンツを作ること
- 口コミ: ユーザーが自然と人に教えたくなるほど価値のある機能を作ること
オーガニック成長に絞った分、最初の進みは遅くなりました。他のスタートアップが有料広告で急速なユーザー増を祝っているあいだ、私たちはコンテンツを丹念に作り込み、被リンクを積み上げ、ユーザーから直接もらうフィードバックをもとにプロダクトを磨いていました。
Medium上でチュートリアルを書き、他のブログにゲスト投稿を寄せ、「Kindleからハイライトをエクスポートする方法」や「研究者向けChrome拡張機能まとめ」といった具体的なユースケースに応えるコンテンツを作りました。どのコンテンツも、価値あるキーワードで上位表示を狙いながら、Glaspの便利さを示せるように設計しました。
被リンクについては特に戦略的でした。SEOにおけるその大きな影響力を認識していたからです。教育機関(私の母校も含みます)や、日本の文部科学省のような政府系サイトにまで連絡を取り、権威性の高いリンクの獲得を目指しました。粘り強さが必要で、返事のないメールも数多くありましたが、獲得できたリンクは長く続くSEO価値をもたらしてくれました。
この規律あるアプローチのおかげで、ユーザー獲得が「お金を使い続けること」に依存しない構造になりました。コンテンツが一度上位に表示されたり、ユーザーコミュニティが一度形成されたりすれば、追加投資なしでサインアップを生み続けてくれたのです。
ゆっくりでも持続可能なこのやり方は報われました。最初の5万ユーザーに達した時点で、全体のCACはユーザー1人あたりわずか数セント。この土台があったからこそ、大きな資金調達をせずに数百万ユーザーまでスケールできたのです。
掛け算の効果:コンテンツの多言語翻訳
早い段階で、私たちは効率重視のアプローチを象徴する強力な成長レバーを発見しました。コンテンツの翻訳です。Ness Labsというメディアに取り上げられたあと、他の言語を話すユーザーに「この記事を翻訳してもらえませんか?」とお願いしてみました。
反響は圧倒的でした。ユーザーたちはその1本の記事を、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、タガログ語を含む10近い言語に翻訳してくれたのです。翻訳が1つ増えるたびに、新しいコンテンツをゼロから作ることなく、新しい言語圏にGlaspの扉が開きました。
この掛け算の効果は、繰り返し使える戦略になりました。英語で価値あるコンテンツを作れば、コミュニティメンバーの翻訳によってリーチを広げられます。10本の異なる記事を書く代わりに、1本の優れた記事を書いて10の市場に届けられるのです。
翻訳がもたらしたのはリーチの拡大だけではありません。ユーザーに「自分はミッションの担い手だ」と感じてもらえたことです。翻訳を手伝ってくれた人たちは、もはやただのユーザーではなく、Glaspのグローバルコミュニティを一緒に築く仲間になりました。
この経験から学んだのは、制約はしばしば創造性を生むということです。プロの翻訳や海外マーケティングの予算がなかったからこそ、コスト効率が良いだけでなく、コミュニティの絆まで強くしてくれる解決策にたどり着けたのです。
ケーススタディ:最初の1,000人のユーザー
ユーザーが1,000人に達する頃には、(手間はかかるものの)再現可能なプロセスができあがっていました。
- 潜在ユーザーのコミュニティを特定する(最初はプロダクトマネージャー、次にライター)
- そのグループやコミュニティに参加する(主にLinkedInとTwitter)
- Glaspを紹介するパーソナライズされたメッセージを送る(1日に数百通)
- 興味を持ってくれたユーザーと1対1のオンボーディング通話を行う
- フィードバックを集め、プロダクトを継続的に改善する
- 彼らの具体的なユースケースに向けたコンテンツを作る
- 満足してくれたユーザーに、同僚への共有を促す
1,000ユーザーまでの道のりは、地道な努力を約3か月続けた末のものでした。ベンチャーキャピタルの基準では速い成長とは言えませんが、彼らはプロダクトを深く理解してくれた質の高いユーザーでした。こうしたアーリーアダプターの多くは数年経った今もアクティブに使い続けてくれていて、誰よりも熱心に私たちを応援してくれる存在になっています。
注目すべきは、このアプローチが従来のグロース戦術とどれほど違うかです。プレゼント企画も、バイラルループも、攻撃的なマーケティングも使いませんでした。その代わりに、実在するユーザーと本物の関係を築き、プロダクトの有用性そのものに語らせたのです。
この誠実な成長の土台は、初期のユーザーベースを超えてスケールし始めたときに大きな力を発揮することになります。次の課題は、初期の成長を支えた人間味のある関わり方を失わずに、数万人、そして数十万人のユーザーに届く方法を見つけることでした。