Top Highlights

• 　合理的に発想すれば、正しい答えにたどり着くはずだというのは、錯覚にすぎない──。 　そう唱えたのは、インド出身のアマルティア・セン教授である。同教授はオックスフォード大学やハーバード大学で教授を歴任し、１９９８年にはアジア初のノーベル経済学賞を受賞している。
• 古典的な経済学がつくり出したホモ・エコノミクスというモデルは、ロジックに基づいて、合理的な意思決定をするものと想定されてきた。セン教授はそのような仮想人間を「愚か者」と断じ、もっと現実に即したモデルが必要だと説いた。
• ハーバード・ビジネス・スクール（ＨＢＳ）のマイケル・ポーター教授が唱える競争戦略は、周りを蹴落として自分だけがひとり勝ちをすることを目指す。極言すれば、競争戦略の究極の目的は、競争を排除することにある。 　しかし、自然独占は競争原理を麻痺させてしまう。そのような不都合な未来を避けるために、圧倒的な競争優位を築いた事業者は、足枷をはめられてしまう。最近のＧＡＦＡなどのプラットフォーマーが典型例だ。競争戦略は成功すればするほど、自らの首を絞めることになりかねない。 　競争戦略の基本は、自らの競争優位を不動のものとすることである。しかし、デジタル革命やバイオ革命などで競争環境が大きく変化すると、これまでの競争優位は通用しなくなる。 　それどころか、既存の競争優位にこだわると、命取りとなってしまう。...
• たとえば、アップルやファーストリテイリングは、オープン・イノベーションの名手だ。アップルは、選りすぐった超一流のプレーヤーとのエコシステムを築いている。ファーストリテイリングは、東レとのコラボレーションを通じて、ヒートテックをはじめとする数々のイノベーションを生み出している。 　これらの成功事例から、次の５つの要件が抽出できる。詳細は、拙著『経営変革大全～企業を壊す１００の誤解』（日本経済新聞出版、２０２０年）を参照願いたい。 ① 他社にない独自資産に磨きをかけている ② あえて自社では持たない領域を決め、その分野で超一流のプレーヤーと組む ③ 単に補完関係にとどまらず、両者が切磋琢磨して真のシナジー効果を生み出す ④ 両者以外の他社を広く巻き込み、事業規模を大きくスケールさせる ⑤ 他社と...
• 企業を表す英語には、もう１つ「カンパニー」という言葉がある。「con（いっしょに）」「panis（パンを食べる）」が合体したものだという。つまり、いっしょにパンを食べる仲間という意味らしい。今でも「カンパニー」は仲間という意味も持つ。たとえば、「マッキンゼー＆カンパニー」は、マッキンゼー（創業者ジェームズ・マッキンゼーのこと）とその仲間たちという意味である。１００年前の創業時には、おそらくみんなで一緒にパンを食べる仲間だったに違いない。 　明治時代初期に、「カンパニー」の日本語訳として「会社」という言葉があてられた。「 社」は古来、土地の神を祀る場所、「会」は多くの人が集まることを指す。こちらの語源を比較しても、英語が「パン」、すなわち物理的なモノを目的語にしているのに対して、日本語は「土地...