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今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる (講談社現代新書100)
www.amazon.co.jp/dp/B0C4N43CJN
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また同じ頃、大阪の大きな橋の下には「乞食」の集落があり、 筵 で小屋掛けをして大勢の人びとが住んでいた(『山に生きる人びと』では橋の下の住民を「サンカ」とみなしている)。そのうちで最も大きな集落は、淀川に架かる長柄橋の下にあり、都島橋の下にも何十組もの家族が暮らす小屋があった。宮本は大阪の街を歩いているうちにそうした人びとに出会い、話をする機会を持ったのだが、宮本はその人たちのことを不潔とも無知とも思わなかった。なかには身体障害者、病気をもった者、精神障害者もいて、町の片隅に吹きだまりのようになって生活していたのである。宮本はそうした現実に義憤をおぼえるより、そこにまた一つの秩序があり、それなりに生きている姿にいろいろのことを考えさせられたのである。その半ばうつろな眼をしているけれども、そう...
「旅」と「観光」 一九六四年(昭和三九) に著わされた『離島の旅』のなかで、宮本は観光旅行ブームについて次のような見解を示している。「今日観光ブームといわれているが、観光客がいったいどれほど観光地に住む人たちの邪魔をしないで寄与しているであろうか」。その生活を破壊する側に回ってはいても、助ける側に回っているものは少ない。 「観光」が観光客本位のものになり、観光地はいつも利用される側に回って、観光地が資本家の手によって植民地化されている。地方の資本が伸び、それが植民地主義に対抗して、地方文化・経済が自立できるようになるべきだ。その方策が立てられないかぎり、地方はいつも食い物にされ、犠牲にされ、文化の恩恵を歪められた形で受けることになる。地方を訪れる人のなかには、本当に地方の生活を見、そこに住...
「人手の加わらない自然は、それがどれほど雄大であってもさびしいものである。しかし人手の加わった自然には、どこかあたたかさがありなつかしさがある。わたしは自然に加えた人間の愛情の中から、庶民の歴史をかぎわけたいと思っている」(「庶民の風土記を」) また「人と自然」(『旅と観光』) という文章も今日的である。宮本は日本人の自然に対する「あまえ」を鋭く指摘する。 「あまえるということが、愛するということの範疇に属するならば、日本人は自然を愛しているといえるだろうが、本来日本人は、自然に対してあまえてはいるけれども自然を決して大切にしてはいない。木でも草でも平気で切ってしまう」
だから、「日本人は旅好きである」というが、じつは「旅好き」にさせられるような社会的環境におかれているのだという。『あるくみるきく』はそういう意味で、日本人と旅との関係を開かれたものにするための突破口のようなものだった。 そして、『風土記日本』『日本残酷物語』から『あるくみるきく』を通じて、宮本にとっての編集は、志を同じくする人びととともに、自身の民俗学を一般に流通させるための営為でもあったのだ。
当時の学界では東日本は後進地域と考え、東国は畿内に比べてはるかに後進的とされてきたが、宮本がそういう差異を、先進・後進という割り切り方をしない点についても評価している。 宮本は、東日本については同族集団、同族結合が基本であり、縦の主従関係を基本にした家父長制的な傾向の強い上下の結びつきを特徴とし、それに対して西日本の場合、フラットな、横の平等な関係を結びあうのが特徴だとする。縦の主従関係が東日本に見られるのに対して、寄り合いや一揆のような横の組織は、西日本に発達するという考え方である。東日本では年齢階梯制は非常に希薄で、年寄り組、若者組、娘組のような年齢階梯制が見えないことも強調する。 また宮本は、日本の文化は日本民族の民俗伝承的堆積を基礎にして生まれたもので、単に上層文化の開花によって...
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