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他人の家
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僕たちはたいして会話もせずに座っていた。それは家にいるときと同様で、外でも変わらなかった。とうとう僕は「そうしよう」と言い、妻は即座に軽くうなずいた。こうして僕たちは、五年四カ月の結婚生活にピリオドを打つという結論を出したのだった。
ところが一月、僕たちはマリと会えなかった。来韓予定の当日、マリから、個人的な事情で突然旅行をキャンセルすることになった、申し訳ない、という短いメールが送られてきたのだ。前日に大掃除を済ませ、食材もどっさり買い込んであって、そのメールを確認したときも、妻はマリをもてなす一皿目の韓国料理――キムチ 炒飯 を作るためのキムチを刻んでいる最中だった。僕たちは不機嫌になり、妻は包丁を動かす手を止めた。その日の夕飯はキムチ炒飯になりそこねたキムチチゲだった。必要以上に細かく刻まれたキムチと、ただ辛いだけのスープはあまりおいしくはなかった。
再びマリから連絡をもらったのは、彼女が韓国に到着する二日前のことだった。掲載を取り下げてからもうずいぶん 経っていたし、その後、マリとは全く交流がなかったから、あまりにも想定外だった。マリは、韓国への到着は 明後日 の月曜日で、空港への出迎えは必要なく、自力でそちらまで訪ねていく、という内容のメールを、スマイルマークの絵文字付きで送ってきた。またも繰り返されたマリの一方的な通達に、僕と妻は開いた口が 塞がらなかった。けれど、かつて送信したメールを今一度確認した結果、本当に察しが悪い人なら「いつでもわが家を訪ねてきてほしい」という言葉を額面通りに解釈することも、なくはないということで意見が一致し、 辛うじて受け入れることになった。
今朝マリがダイニングテーブルの前で見せてくれたヘンテコなダンスを真似たら、妻はプッ、と噴き出した。
「サンタ村にも行かれたことがあるんでしょうね」 「行くだなんて、私、そこで働いているんですよ」 「本当に?」
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