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哲学とは何か NHKブックス (Japanese Edition)
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哲学とは何であるのか。まずこれを、宗教と比べてみよう。宗教は「物語」(神話)によって「世界説明」を行なう。だが何のために。その本質的理由は明らかだ。共同体における善悪、聖俗のルールを定め、そのことで共同体の秩序を安定させるために。つまり、 暴力を縮減するため に、である。
つぎの問いは、なぜ普遍認識が必要なのか、である。まずつぎのように言わねばならない。個々の人間にとって何が大事なことかはそれぞれ違う。だから、とくに近代社会では、考え方の多様性というものはきわめて重要なものであり保証されねばならない。しかしこれとはべつに、人間社会はつねに共通了解、共通の考え方を創り出す必要をもっている。 たとえば近代以前のヨーロッパでは、カトリックとプロテスタントが教義(世界観)の違いによって、百年以上も、信仰上の戦いの泥沼から抜け出せなかった。つまり社会的な聖俗や善悪にかかわることがらについて、〝誰もが納得できる共通了解〟を見出す方法を創り出すことは、多様な人間の共存のために不可欠なのである。
正しい世界観」を主張したマルクス主義の現実態としての社会主義国家は、大量の人間の粛清といった事態を含む大きな矛盾を露呈した。ここから、哲学的相対主義としてのポストモダン思想が新しい社会批判の担い手として登場し、「これこそが正しい認識だ」とする主張は、きわめて危険なもの、避けなくてはならないものと見なされた。
その後、時間を哲学にとっての重要な「謎」として提示したのはアウグスティヌス(インドではナーガールジュナの時間論が有名)である。こんなふうに言っている。《未来もなく過去もない。厳密な意味では、過去、現在、未来という三つの時があるともいえない。おそらく、厳密にはこういうべきであろう。「三つの時がある。過去についての現在、現在についての現在、未来についての現在」》(『告白』 421 頁 山田晶訳)。
美の謎は、もっといえば「価値の謎」に属する。これには、ウィトゲンシュタインの象徴的な言葉がある。《倫理を言葉になしえぬことは明らかである。倫理学は先験的だ。(倫理学と美的感覚とは一体である。)》(『論理哲学論考』 116― 117 頁 奥雅博訳) つまり、そもそも哲学は「価値」の問いを論じることはできない、というのだ。その理由は、善や美については、その 真偽 を論理的に規定することはできないから。これは、感覚・審美性と言語の間の「不一致」という問題であって、やはりゴルギアス・テーゼの一変奏といえる。
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