Top Highlights

• 　緒方先生ともう一人、開発経済学でノーベル賞を取ったアマルティア・セン先生のお二人が理論的に構築した人間の安全保障は、人道と開発を「つなぐ」有効な考え方として２０００年代の国連の活動の統合に大きな影響を与えます。それは、２００５年に当時のコフィー・アナン事務総長が発表した、国連の平和・開発・人権における活動を統合していくべきという事務総長報告「In Larger Freedom：より大きな自由を求めて」につながっていきます。本書ではこの「より大きな自由」という言葉がＳＤＧｓの一番初めの文章に書かれている意味、そしてこの概念がＳＤＧｓのみならず第二次世界大戦後の国際社会を根本から支える概念であることを明らかにしますが、そこには人間の安全保障という現場の視点が大きな役割を果たしたのでした。
• 　世代を超えてすべての人が自分らしくよく生きられる世界へ 　こうした大きな流れから生まれたＳＤＧｓには、本書で詳述するように、 17 の目標、１６９のターゲットを遥かに超えた大きな世界観があります。それは、人類がこれまでの歴史から学び次の世代に伝えたいメッセージであり、また将来の子どもたちに引き渡したい世界そのものでもあるのです。これらは 17 個の素敵な（私も好きな） アイコンだけからはどうやったってわかりませんし、ましてや１６９の数値目標をどんなに研究しても出てきません。しかしそれらはこのＳＤＧｓという文書の前文や宣言の中にちりばめられ、しっかりと根を下ろしています。
• 　世代を超えて（present and future generations） 　すべての人が（leaving no one behind） 　自分らしく（in larger freedom） 　よく生きられる（well-being） 世界 　ということが私のＳＤＧｓ世界観の解釈です。これらはすべてＳＤＧｓという国連文書の中に明示的に含まれている言葉であり、一つひとつが大きな歴史と思想をその背景に持ち、現在と将来の世代に対する希望を紡いでいると感じます。そしてこうした世界観への理解なしにＳＤＧｓの個別の目標に断片的なやり方で取り組むことは、私にとっては１９９０年代に国連が犯した過ちとまったく同じことの繰り返しに見えるのです。今求められることは、国際社会のすべてのアクターが目指すべき世界観に共...