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枝角の冠 第3回ゲンロンSF新人賞受賞作 ゲンロンSF文庫 (株式会社ゲンロン)
www.amazon.co.jp/dp/B089W51J5S
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みすぼらしい毛皮をかぶった自分に、ふいに、はげしい羞恥と混乱をおぼえる。ここにいるわたしは、一体何者なの? 不器用な二本の足、爪のない二本の手。どうしてわたしはこんなにも無様で醜いの。あのひとはあんなに優美なのに。
けれども大バアさまの声はまだ村のどのバアさま衆よりもはっきりとしていて、物語る声は永遠に途切れることがないかのようでもあった。 あの
「おぼえておきなさい。これは愛の物語だ。人はかつて、愛しあうことにおいて完全だった。白鳥や鷹が己のつがいを選ぶように、己とよく似た姿をしたものを見つけ出し、生涯の伴侶とした。そうして愛するものとのあいだに子どもが生まれれば、鶴や烏のように慈しんでそれを育てた。私たちが完全だったころ、私たちは鳥のように愛しあっていた。 けれど、あるとき人間たちは、大枝角の鹿を見てこう言った。『たった一匹の牡が、おおくの牝すべてによって愛されている。あんな風に好きなだけ女を持つことができたらどれだけ喜ばしいことだろう』 またある時には、大蛇を見てこう言った。『どれだけ年を経ても皮を脱げば再び若くなり、交わり悦ぶことの楽しみは死ぬまで尽きることがない。あんな風になればどれだけ楽しいことだろう』 また三度目...
アイはかわいい。わたしだって、そう思っている。 でも違うのだ。どう説明したらよいのか分からない、けれど、わたしはアイとつがいになりたいわけじゃない。アイの子どもに乳をあげたいとも思わない。この気持ちはどんな言葉にもしようがない。黙ってしまうことしか出来ない。 アイは昔、わたしに草の外套をつくってくれた。枝を編んで角にして、長い尻尾だってつくってくれた。でもそれだけだ。アイはけっして、わたしと同じ草の外套を着ようとはしなかった。 それでも今までずっとわがままを許してくれていたのは、それだけ、わたしのことを好きでいてくれたから。そんなアイに、これだけのことを言わせてしまった。 だってこのままでは、息子として、おとうさんを殺さなければいけなくなるから。 わたしはおとうさんが好きで、アイの...
わたしはどうしても、人の輪に加わる気持ちになれなかった。 だって物語には、女の物語しかない。英雄も、神も、愚か者も、すべて人間だ。
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