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文学のトリセツ: 「桃太郎」で文学がわかる!
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もし私たちが現代の文学研究の世界において印象批評を試みると、かえって自分の教養のなさ(つまりは上位文化の欠落) をさらけ出す、価値のない感想文と見なされてしまう可能性が極めて大きいと言えるでしょう* 20。
桑原武夫は『文学入門』において、「優れた文学とは、われわれを感動させ、その感動を経験したあとでは、われわれが自分を何か変革されたものとして感ぜずにはおられないような文学作品だ* 21」と述べています。これは一読すると的を射た意見のように思えますが、裏を返せば桑原個人の感覚によって作品の優劣が決まってしまうことを意味しています。つまり、桑原を感動させる作品は「優れた文学」と見なされ、桑原が感動しなかった作品は「通俗文学」と見なされてしまうというわけです。もちろん、言うまでもなく私たちは桑原と同じレベルの感性を持っているわけではありません。桑原が感動しなかった作品が、他人にとって感動的な作品であるケースは数多くあるでしょう。しかし、桑原は「 実生活の経験のある、良識のある大人ならば、迎合的作品に...
構造主義の最大の成果は、なんと言っても 物語論の体系化 でしょう。物語論とは、ストーリーの型を研究する領域です。構造主義の手法を使うことによって、人類が作り出すいかなるストーリーにも、英語や日本語の文法のように法則があることが分かってきました。構造主義は、あたかも腕の良い外科医のように文学作品に鋭いメスを入れ、論理的に分析することによって、そうした法則を見出すことができたのです。例えば、文学者 ユーリ・ロトマン* 20 は、『文学理論と構造主義* 21』 において、文学作品における空間の枠組みをシステマティックに論じています。彼によれば、文学作品に登場する人物は「 動的な登場人物」と「 不動的な登場人物」の 2 種類に分けることができます。動的な登場人物とは、物語において、ある空間からもう一...
すぎないのでしょうか? こうした構造主義の欠陥を克服しようとした人がいました。前に紹介した、「脱構築」の旗手ジャック・デリダです。彼は構造主義の手法を批判的に分析し、二項対立という概念が、実際には不平等で暴力的な上下関係を含んだものであることを指摘しました。例えば、「男/女」という二項対立は、一見ごく普通の枠組みに思えます。しかし、よく考えてみると、現実の世界において男と女は決して平等とは言えません。日本において、政治家や会社の重役を占める人物はそのほとんどが男性ですし、男女の給与格差はOECD諸国の中でワースト 2 です。しかも、日本の女性は一度出産のために会社を休むと、その後の職場復帰が非常に困難になります。2020年の世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数では、日本の男女平等ラ...
桃太郎は社会にとって良い事をするために、暴力を行使しました。桃太郎を善人とみなすなら、「暴力によって社会を変革するのは善である」というイデオロギーを肯定してしまうのではないでしょうか? 私たちは学校で、暴力はいけない事だと教わりました。それなのに、ここではある種の例外が認められているのです。というのも、ここで述べられている「社会」とは、一体どの社会のことを指すのでしょうか? 桃太郎にとって、社会とは自分が育った村のことを指すのでしょうが、鬼たちにとっては、社会とは自分たちが住んでいる鬼ヶ島の社会に他なりません。もし鬼たちが生きるために村人を襲うことを決めたのであれば、それも「社会のための暴力」であり、桃太郎と同じ論理が展開されていると言えます。ここに至って、「桃太郎=善/鬼=悪」の二項対立は...
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