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禽獣(きんじゅう)の門 赤江瀑短編傑作選 (光文社文庫)
www.amazon.co.jp/dp/B07Y1Y63X6
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つまり、変える者がいなかったから、変らないものが残ったのだ。
青い渚や、白い流木や、動かない無数の赤い石が、その時、すでに過去に、今の自分と同じように、ここでこんな風にして 命 を落した人間達の 亡骸 のような気さえした。
海の中に、一条、あるべき筈の、白い細い長い 還り道が、音もなく消え失せ、跡形もなくなっていた、あの夏の日の一瞬間からそうなのだと。
知らぬ間に自分はこの日を待ち、待ち焦がれている自分に気づかぬふりをしてきたのではないだろうか……。一人の人間が死ななければ、決して自分の上には訪れてこない日。その日を、待ち焦がれていたとすれば、自分は、一人の人間の死を、待ち焦がれていたということになる……。
「死んでいく人間が、この世に命の片割れ残してたら、わたしも成仏でけんやろし、あんさんにもご迷惑どす。……彫り物は、 生身 の体で生きとんのどす。絵やない。焼物や、細工物や、友禅なんかとはちがうのどす。生き物や。やれ誰それの作やとか、これは何代目の彫りやとか、じゃらじゃら語り草にして、悦にいっててええもんとはちがうのや。生きてる人間が、おのれの血で、 生 の血で、 飼うていかなならんものどす。彫り物が 一人のもの やと言うのも、ここのところどす。わたしが死んだら、あんさんの背中の彫経も、死ぬんどす。あとは、あんさん一人の彫り物になるのどす。彫り物を、生かそうが、殺そうが、それはあんさんの心次第。わたしは、そんな彫り物を、彫ったつもりでおす。そやさかい、あんさんの背中の彫経は、わたしが死んだとき...
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