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• 発車前の列車内に、車内アナウンスが流れる。世良と垣谷は耳を 澄ます。 「何て言ってるかわかるか？」 「さあ。フランス語みたいですが」 　世良と垣谷の会話に駒井が割ってはいる。 「列車の出発が五分ほど遅れる、と言っとるようですと」 「お前、フランス語がわかるのか？」 　垣谷が驚いて尋ねると、駒井は肩をすくめる。 「こっちに来て長いですから。日常会話の 片言 くらいは、少々」 「長いといっても、たかだか一週間だろ」 「日常生活に必要な単語はわずかですばい。こっちに来る前に数字だけは徹底的に覚えたとです。あとは単位ですばい。それがわかれば今の放送で五分、という単語がわかりもす。止まっている電車の車内放送が五分、といえば、五分遅れですばい」 「なんだ、半分はあてずっぽうか」