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• 　幼い頃、祖母には人一倍可愛がられたという記憶が公一にはあった。春の陽だまりのようにいつもにこにこと笑っていた祖母が大好きだった。その祖母が自分を騙る悪党にだまされて死んだ。 　悔しくてならなかった。そんな奴と自分の区別がつかなかったのか。 　他の多くの被害者同様、そこまで動転してしまったのだろうという想像はできる。それだけにやりきれず、情けなく、また責任すら感じていた。本来自分が感じる必要のない責任である。それでも公一は感じずにはいられなかった。
• 田中先生は職員会議で彼の更生に全力を尽くすと約束したらしい。その第一歩が、野外合宿への強制参加である。他の生徒との共同生活を通して、彼に中学生としての自覚を取り戻させる――並み居る教師に対してそう説得したという。 　これ
• 致命的だったのは、周囲を山に囲まれた地形と基地局の位置の関係で、携帯電話の電波がほとんど入らないということだ。公一の聞いた限りでは、なんでも地形的にアンテナの設置が難しかったとか、電話会社が地権者と 揉めたとか、原因についても諸説あるようだった。 　
• 振り込め詐欺を行なっている組織は完全なピラミッド型になっていて、より上位にいる者ほど多くの利益を得られる仕組みになっている。さらにその頂点に立つごく限られた者だけが利益のほとんどを独占する。逆に末端の者は、単なる使い捨ての駒でしかない。口座から金を引き出す役を命じられることから『出し子』と呼ばれる者達の多くは、組織にとって他に利用価値のない不法入国者や多重債務者である。いくら彼らを捕らえたところで、組織の頂点にいる者達にとってはなんら影響はなく、全容解明の手がかりにさえならない。 　最初にシステムの原型を考案したのが誰であるかは結局のところよく分からないが、現在その最大手ではないかと噂されているのが『 関帝 連合』出身者を母体とする組織であるということだった。 『関帝連合』とはいわゆる〈半グ...
• 「県の教育委員会からセミナーハウスの予約が入っているはずですが」