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ミノタウロス
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揺るぎない支配は神性に似ている。狡猾も、残忍も、十の子供を眠気と空腹と諦めで小さく縮んだ老人に変えてしまって顧みない冷淡も、神々の特質に他ならない。母子
一人でここを全部耕す気かね、とシチェルパートフは言った。お馬車に乗ったお偉い方々の喋り方だった。そりゃそうだ、と親父は一人で納得した。農場を持ったなら、おれもこう喋らなけりゃならない。餓鬼ができたなら餓鬼どももみんな、こういう風に喋らなけりゃならない。
屋敷にピアノを入れ、スイス人の鼻眼鏡の老嬢を養育係に雇い、使用人一同に田舎臭い訛りで話すことを禁じ、書庫には誰も読まない外国語の本をずらりと並べ、田舎道にはおよそ不向きな軽馬車を仕入れ、帽子ごと全身を包み込んだ紗を風に膨らませて埃だらけの真夏の道をどこまでも駆けさせて行くお袋は、ついぞミハイロフカの住人になろうとはしなかった。
兄は親父のしみったれた出自から可能な限り遠ざからなければならなかったが、ぼくは親父の記憶を忠実に受け継がなければならなかった。ぼくはミハイロフカを繁栄させ、兄は栄光で飾らなければならなかった。文句なしに、ぼくは自分の立場が気に入った。ぼく
人間の尊厳なぞ糞食らえだ。ぼくたちはみんな、別々の工場で同形の金型から鋳抜かれた部品のように作られる。大きさも、重さも、強度も、役割もみんな一緒だ。だからすり減れば幾らでも取り換えが利く。彼の代わりにぼくがいても、ぼくの代わりに彼がいても、誰も怪しまないし、誰も困らない。 イワンには言わなかった。困らせたくなかったのだ。彼が見ていたのはもっと美しい夢だったし、そこでは誰もに──もちろんイワンにも、しかるべき持ち場があり、他の誰でもない誰かこそが──もちろんイワンもだが、そこにいなければならないと信じていたからだ。彼が最後までそう信じていたかどうか、ぼくは知らない。そう信じていてくれたらよかったとは思う。彼は早死にしたのだ。ぼく
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