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最後のトリック (河出文庫)
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《ジャンルに内在している富が、ほぼ汲み尽くされてしまった》などと書くと、なにやら難しそうですが、要するにそれは、《本格物》をミステリーの王道たらしめていた《意外な犯人》のパターンが、いい加減出尽くしてしまったということです。探偵が犯人、被害者が犯人、死人が犯人、動物(オランウータン、ヘビなど)が犯人、事件の記述者が犯人、自然現象(風や雪など)が犯人、物心つかないような子供が犯人、さらにはその場にいた全員が犯人、事件を担当した法医学者が犯人などなど……今までそれこそ星の数ほどの人間が犯人役をつとめて来ましたが、それがとうとう出尽くしてしまったのです。
ところが実はたった一つだけ、いまだ誰も実現させていない最後の不可能トリック、究極の《意外な犯人》というものがあるらしいのです。 それは一体何でしょうか? ミステリーの関係者、あるいは愛読者ならばご承知のことでしょう。実はもうずっと以前から言われ続けているのです。 それはずばり、《読者が犯人》というものです。
ところがそれはできない事情があるのです。 一つには今の私には、それだけの余裕がないということです。この場合の余裕とは、時間的余裕や経済的余裕、さらに心理的余裕なども含んだ重層的な意味だと解釈して下さい。
そして二つ目の理由──実はこちらの方がより大きな理由なのですが──、それはこの手紙の冒頭でも恥を忍んで告白した通り、およそ私が文章なるものを書いたことがないということです。 この手紙だって、とても 他人 様の目に晒せるような文章ではないことは自覚していますが、これでも何日もかかって、何度も何度も書き直して、ようやくここまで書き継いだのです。 貴殿は 嗤笑 なさるかも知れませんが、本当のことです。
香坂誠一 拝
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