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ドン・キホーテ 前篇二 (岩波文庫)
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「あの男を探しまわったりしねえほうがずっと得策というもんですよ。だってそうでしょう、もしあの男が見つかって、それがこの金貨の持主だってことになった日にゃ、当然のことにおいらは 金 を返さなきゃなりませんからね。だから、そんな無駄骨を折るのはやめにして、もっと手間のかからない、ごく自然な成り行きによって本当の持主が名のりをあげるまで、おいらが気持よくこれを預かっておくことにしましょう。万一、そうした人物が現われたとしても、おそらくその頃にはおいらも金を使ってしまっていて、そうなりゃ王様の法律だって返済を免除してくださることだろうし。」
「それはお前の心得違いだぞ、サンチョ」と、ドン・キホーテが反論した。「すでに金貨の持主が誰なのかおおよそ見当もつき、しかもその者をほとんど 指呼 の 間 にしているのであってみれば、ここはどうしても彼を探し出して返してやる義務があるのじゃ。もし、あの男を探そうとしなければ、彼が持主に違いないとわれわれが思っているという事実によってわれわれは、現実に彼が持主である場合と同じような罪を犯すことになるのだぞ。だから友のサンチョよ、あの男の探索をいやがらないでもらいたい。彼を見つけだせばわしの心が晴れ、良心の 呵責 を覚えずにすむというものじゃ。」
さて、すでに狂気にとらわれていたカルデニオは、自分が噓つきだとか悪党だとか、さらにこれに類する言葉でののしられてみると、その場の冗談を解するどころではなく、どうにも腹の虫を抑えかねた。それゆえ手近にあった石ころを取りあげると、それでもってドン・キホーテの胸元にしたたかな一撃をくらわせて、仰向けに倒してしまった。
主人がこんなひどい仕打ちを受けるのを目のあたりにしたサンチョ・パンサは、 を固めて狂気の若者に襲いかかったが、身構えていた《襤褸の騎士》の強烈な 骨 の一撃を浴びて、逆に相手の足もとに伸びてしまった。しかもカルデニオは、すかさず倒れた男の上に乗ると、そのあばら骨を思う存分に踏みつけたのである。
サンチョを助けようとした山羊飼いも、また同じ憂き目にあうことになった。こうして三人をやっつけ、さんざんに叩きのめしたカルデニオは、彼らをそこに残したまま、 悠揚 迫らぬ足どりで山のなかに姿を消していった。
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