Home
My Highlights
Discover
Sign up
Read on Amazon
ドン・キホーテ 前篇一 (岩波文庫)
www.amazon.co.jp/dp/B00QT9X7ZQ
Import Your Kindle Highlights to Glasp Today 📚
Top Highlights
実を言えば、わたしは君を、何をやらせても抜け目のない聡明な人間とばかり思いこんでいた。ところが今の話を聞いて、君が聡明から遠きこと、それこそ天と地ほどのへだたりのあることが分かったよ。それにしても、これほど 些細 な、容易に解決のつくはずの事柄に、君のごとき円熟した才覚の持主をうろたえさせ、茫然とさせる力があるなんて、とても信じがたいじゃないか。なにしろ君は、これとは比べものにならないような難事でもやすやすと克服し、切り抜けてきたんだからね。
実際、このドン・キホーテという騎士については、彼こそ久しい昔から今日に至るまでモンティエルの平原に姿を現わした、最も純情な恋する男にして最も勇敢な騎士であるというのが、その地方の住民の誰もが口にする評判である。
さて、われらの郷士はやがて五十歳にならんとしていた。骨組はがっしりとしていたものの、やせて、頰のこけた彼は、たいへんな早起きで、狩りが大好きであった。
ところで、知っておいてもらいたいのは、上述の郷士が暇さえあれば(もっとも一年中たいてい暇だったが)、われを忘れて、むさぼるように騎士道物語を読みふけったあげく、ついには狩りに出かけることはおろか、家や田畑を管理することもほとんど完全に忘れてしまった、ということである。こうした好奇心がこうじて読書がやみつきになった郷士は、こともあろうに、読みたい騎士道物語を買うために何ファネーガもの畑地を売りはらい、その種の本で手に入るものをすべて買いこんだ。
要するに、郷士はこの種の読物にどっぷりつかり、来る日も来る日も、夜は日が暮れてから明け方まで、昼は夜明けから暗くなるまで読みふけったので、睡眠不足と読書 三昧 がたたって脳味 がからからに干からび、ついには正気を失ってしまったのである。
Share This Book 📚
Ready to highlight and find good content?
Glasp is a social web highlighter that people can highlight and organize quotes and thoughts from the web, and access other like-minded people’s learning.
Start Highlighting