Top Highlights

• つい四年前まで詐欺業界の周辺で「オレオレ詐欺の帝王」といわれていた 本 藤 彰（仮名）から詳細に詐欺世界について聞き取る機会を得たのだ。もちろん詐欺を仕掛ける側、加害者の立場から見た詐欺世界である。
• グループが手掛けていた詐欺はオレオレ詐欺に留まらず、ワンクリック詐欺、未公開株詐欺、社債詐欺、イラク・ディナール詐欺など、詐欺のデパートといっていいほど多岐にわたっていた。
• 本藤が筆者に語ってくれた一因に、こうした不正確なレポートへの反発もある。「事実がどうだったか、はっきりさせたい」は損得を越えた本藤の性格といっていい。
• 本藤彰は三〇代後半、一七八センチと背が高く、弁舌はさわやか。暴力臭はまるでなく、知的に諄々と説得していくタイプと見受ける。頭は非常に切れ、カタギのどんな仕事についてもきちんとこなしただろうと思わせる。事実、彼は大学卒業後、大手の広告会社に五年ほど在籍したことがある。
• 　もちろん本藤がやってきたことは社会的にも法的にも非難されて当然だろう。被害者が受けた被害額もその多くが回復されていないと見られる。 　しかし私はこの新書で本藤がやってきたことの是非善悪を喋々したくない。彼が成した悪事を糾弾するより、彼が語る詐欺世界の実相を伝える方が世を裨益すること大だろうと考えるからだ。どのような人間が詐欺世界の頂点を極めるのか、私の場合は刑罰より人間への興味の方が大きい。